しなの鉄道「有料ライナー」計画は成功するか グリーン車並み座席指定車なら採算取れる?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

しなの鉄道は、1997年10月1日の北陸新幹線高崎駅―長野駅間開業に伴い東日本旅客鉄道(JR東日本)から経営分離された信越本線の一部区間・軽井沢駅―篠ノ井駅間65.1kmを引き継ぐために、1996年5月1日に長野県や沿線自治体などによって設立された第三セクター鉄道事業者である。

2015年3月14日には同新幹線長野駅―金沢駅間の開業に伴い、信越本線長野駅―妙高高原駅間37.3kmを北しなの線として継承。現在ではしなの鉄道線と北しなの線の2路線、計102.4kmを運営する鉄道事業者となっている。

同社は開業後、長距離客が新幹線に転移したことなどによって低迷し、債務超過に陥った。最大株主である長野県は2001年2月21日、経営改革検討委員会を設置し、同年12月4日には同委員会による「しなの鉄道経営改革に向けての提言」を公表した。

その中身は、県が保有する同社への債権103億円の株式化(デットエクイティスワップ)を柱とする抜本的な再建策であった。その後、民間から経営陣を招聘し、積極的な増収策や経営合理化、減損会計に取り組んだことなどが功を奏し、2005年度以降、12期連続で営業黒字を計上するまでに持ち直した。

黒字の要因は車両更新抑制

しかし、2016年6月15日に社長に就任した玉木氏は決算への楽観論について「これまで黒字を確保できていたのは、車両更新を抑制してきたことが大きい」と戒める。

しなの鉄道の観光列車「ろくもん」(提供:しなの鉄道)

玉木社長は、「当社の主力車両はJR東日本から継承した115系電車だが更新の時期に来ている。更新には総額約100億円が必要だが、国・地元自治体・当社が3分の1ずつ負担した場合でも当社には33億円の負担が発生し、減価償却費は年2億5000万円増加する」と話す。

そして、将来の見通しについても「そのほかにも、プロパー社員の平均年齢(現在35歳)の上昇に伴う人件費の増加も重なり、合計で年6億円程度の負担が発生する計算だ。当社線の2016年度の輸送人員は1442万6000人で、同年度のJR山手線の輸送人員13億9700万人の3.8日分にすぎず、しかも輸送人員は毎年0.8%ずつ減少しているため、2032年度には2017年度比で3億円の運賃収入減少が見込まれる。経費増と運賃収入減で、現状の3億円の営業利益は簡単に吹き飛んでしまう」と厳しい見方を示す。

こうした厳しい将来見通しがあるからこそ、しなの鉄道は積極的な収益確保策を計画するのである。そして、現在話題を呼んでいるのが、「通勤ライナー」の復活構想だ。

次ページ「ライナー」は新幹線に勝てるか
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事