共同開発車がヒット。日産と三菱の深まる連携 日産・三菱提携の本気度

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合弁開発会社を設立 両社のネタを持ち寄る

こうした状況を打開するため、日産・三菱は10年末、共同開発から生産協力にまで踏み込んだ提携をスタートした。その最初の成果がデイズ、eKワゴンだ。

「親会社の意向を酌みながら、時には手を握り、時にはけんかしながら企画しましたよ。異なった頭脳が増える分、それぞれにない特長を盛り込めた」

そう語るのは、NMKVの鴛海(おしうみ)尚弥・商品企画グループチーフプロダクトスペシャリスト。NMKVは、11年に日産と三菱が軽自動車の共同開発を行うために折半出資で設立した会社(本社・東京都港区)だ。

NMKVには日産・三菱双方から、企画や開発、設計など各セクションについて同数のスタッフが派遣(出向)されており、鴛海氏は三菱側から派遣された商品企画担当の責任者だ。

鴛海氏が共同開発の成果の一つに挙げるのが、2社それぞれが持つ装備のラインナップから、いいとこ取りをして1車種に盛り込めたこと。

たとえば、軽自動車では初めて、タッチパネル式のオートエアコンを採用(一部グレードのみ)したが、これは日産側の提案によるもの。一方、紫外線カットガラスは三菱側が持ち込んだものだ。

もちろん、意見の食い違いも多い。開発当初、他社製品とどこで差異化するかを決めるときにはこんなことがあった。日産出身者は「質感のあるデザイン」を主張したが、三菱側は、そもそも好みが分かれる「デザイン」に注目することに違和感があった。議論の末、「質感」を訴求することで方向性をまとめたという。

また、出身母体によって仕事の進め方が違うことに加え、両親会社に対してそれぞれ報告・承認を求める必要があるなど、繁雑な面もある。

ただ会社同士の共同作業ではなく、NMKVという一つの会社を作ったことで、スタッフのベクトルを合わせやすくなったのは確かだ。

協業第1号車は、フロントマスクのデザインや、日産車のみに装着したアラウンドビューモニターなど、両社の販売戦略の違いから、一部の仕様に差が生じている。量産効果という意味では、極力仕様を共通化するべきなのにもかかわらずだ。

鴛海氏は「NMKVとしては、商品企画力をつけ、共通仕様車が両親会社に受け入れらるようにしていきたい」と言う。両社の軽自動車の商品開発がNMKVに黙って一任されるようになるのが理想の姿だ。

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