中国は北朝鮮に相当厳しい制裁を与えている いつの間に「態度」が変わったのか?

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たとえ、北朝鮮労働者の受け入れを禁止するという制裁内容に関して中国の対応に緩みが出ているとする散髪的な報道が事実であったとしても、この程度の小さな緩和措置が全体に大きな影響を及ぼすとは考えにくい。

北朝鮮が持つさまざまな外貨獲得手段の中で、出稼ぎ労働者にどれくらいの重要性があるのか考えてみるといい。現在の制裁措置が導入されたのは2017年9月だが、ある推計によれば、現在の制裁が導入される前の2016年時点で、北朝鮮の海外出稼ぎ労働者の数は11万〜12万3000人おり、約40カ国に派遣され、総額で9億ドル(約980億円)を本国に送金していた。

中国からの輸入は尋常ではないほど高い状態

これは、どれくらいのインパクトの金額といえるのだろうか。比較のために北朝鮮と中国の間の二国間貿易の総額を見てみると、2016年6月で5億ドル(約550億円)に迫る水準にあった。

言っておくが、わずか1カ月間でこれだけの金額に達していたのだ。2013年時点において、中朝貿易の総額は65億ドル(約7100億円)に匹敵し、北朝鮮からの中国向け輸出は36億ドル(約3900億円)に達していた。もちろん、出稼ぎ労働者が稼ぎ出していた9億ドルが無視できるような金額だというつもりはない。実際、けっこうな額だ。

ただ、鉱物資源やその他の商品の輸出のほうが、出稼ぎ労働者に比べ、はるかに重要な外貨獲得手段になっている点を見失わないようにすることは大切だ。

国連決議に基づいて中国が制裁を実行し始めた昨年後半以降、北朝鮮の輸出は大きく減少し、北朝鮮経済が痛手を被っているのは間違いない。中国からの輸入は依然として尋常でないほど高い水準にある。貿易赤字を抱えた北朝鮮に対し、中国が資金援助を行っている可能性はあるものの、貿易収支の不均衡は明らかで、北朝鮮の外貨準備高は相当な打撃を受けているはずだ。

もちろん、中国もロシアも、あるいは当の北朝鮮でさえも、このような制裁圧力が永遠に続くとは考えていない。おそらく、かなりの長期間にわたって続くとすら考えていないだろう。だが、今のところは、「最大限」の圧力とまではいかないにしても、北朝鮮はかなり強い圧力にさらされているように見える。

(文:ベンジャミン・カツエフ・シルバースタイン)

筆者のベンジャミン・カツエフ・シルバースタイン氏は米国のシンクタンク、外交政策研究所の研究員で、北朝鮮経済専門のウェブサイト『North Korean Economy Watch』の共同編集者。
「北朝鮮ニュース」 編集部

NK news(北朝鮮ニュース)」は、北朝鮮に焦点を当てた独立した民間ニュースサービス。このサービスは2010年4月に設立され、ワシントンDC、ソウル、ロンドンにスタッフがいる。日本での翻訳・配信は東洋経済オンラインが独占的に行っている(2018年4月〜)。

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