民営化「大阪シティバス」が抱える根本問題

全国で続々、公営バスの民営化は課題が山積

むしろ、公営バスの経営が改善されない理由は別のところにありそうだ。公営バスは公営“企業”であるがゆえに財政負担の縮小を求められる一方で、“公営”だからと市民からの要望や議員・議会の意向によって路線やバス停が左右され、採算度外視の“政治路線”が優先される。運賃は議会の議決を経なければ改定できない。そうした公営であるがゆえの「足かせ」が公営バス事業を縛ってきた面がある。また、小泉純一郎内閣の改革以来の“官から民へ”の流れによって、民営化に取り組まなければ時代遅れ、または政治手腕が疑われるとばかりに、首長の公約や議会の動向が民営化に大きく傾き、政治的決着するケースが多い。

一方で公営のメリットを発揮できる面もある。市が運営主体であるから、市が推進すべき政策を反映しやすく、市が考える交通ネットワークの実現が見えやすい。また、財政による資金の裏付けにより、新たな投資やトライアルに対応しやすいという面を見逃すわけにはいかない。実際、過去のバス車両の技術革新において、大都市公営バスの果たした役割は大きい。バリアフリー対応(リフト・低床化など)や低公害対応(CNG・ハイブリッド・燃料電池など)は、公営バスによる試作または先行導入で実用化の道筋ができたと言える。

交通政策は「交通局」にお任せ?

とはいえ、行政自体がそのメリットをこれまで生かしてこなかった。どちらかというと、交通局を持つ市に限って市長部局に交通政策を考える部署がなく、「交通のことは交通局が考えればよい」と思い込んでいた節がある。しかし交通局はあくまで事業者であって、政策を立案し進める権限も仕組みもない。こうした市の政策の中の位置づけさえ曖昧なまま、交通に関する市民サービスを実質“丸投げ”されたことが、公営バスの立ち位置を中途半端なものにし、経営の自由度を失わせていった。

近年、地方のバス事業を取り巻く状況は厳しく、単独で収益事業として成立するケースは少ない。このため、多くのバス路線には公的な補助が投入されている。すなわち、地方の乗合バスは行政の関与なしには成り立たないという現実があり、すでに実質「公設民営」に近い状況にある。「公」のかかわりはむしろ必須となってきた地域の交通ネットワーク維持の実態からすると、公営バス事業を民営化したところで、それに対する公的な支援は避けられまい。

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