民営化「大阪シティバス」が抱える根本問題

全国で続々、公営バスの民営化は課題が山積

逆に民営化のメリットとして挙げられるのが、「サービスの向上」や「経営の多角化」などによる経営改善である。ただ、サービスの向上は、公営においても接遇等のソフト面は民営並みにできるほか、財政の裏付けがあればハード面でもむしろ先進的なことができるのは前述のとおりだ。

公営企業には制約のある多角化は確かに民営化によって可能になる部分はある。しかし大阪市もそうだが、バス事業が持つ資産(営業所用地など)は必ずしも市場価値が高いとはいえず、民営も含めてバス事業者の多角経営が成功した事例は少ない。

では、大阪シティバスには明るい将来が見えているのだろうか。大阪シティバスの社員は基本的に交通局職員の転籍で、早期定年などによる退職で約1割人員が減少し、それなりにスリム化はしている。また前述のアクションプランにもとづき、2010年代前半に大幅な赤字を抱えていたコミュニティ系の「赤バス」や極端に採算性の低い路線を廃止、過去には960台ほど保有していた時代もある車両数も移管時点では541台(従来の大阪シティバス事業用の11台を含む)に絞られている。すでにある程度の「ぜい肉」は削っての移管であることは事実で、単年度黒字基調の維持は可能という予測がなされている。

10年間の縛りが今後問題に?

ただ、最大の懸念事項は大阪市が民営化のスキームとして示している「原則10年間は譲渡時の路線・運行回数・運賃を維持する」という方針である。もちろん、激変緩和措置は必要で、民営化した途端に不採算路線を廃止というのは市民的に受け入れられないのも事実である。しかしこれまでの民営化でも、移譲時の状態を維持する期間は2~3年が一般的で、長くても5年だった。10年の間には地域の環境も大きく変わる。特に人口減少と少子高齢化が進むこれからの10年は、社会の変貌にともなう利用実態の変化が著しいはずだ。それなのにその間、実態に合わせた路線再編やサービスレベルの変更ができないとなると、経営上大きな「足かせ」を抱えることとなる。

大阪市では公共交通ネットワークに関する業務を主務とする都市交通局を市長部局に新設し、大阪シティバスと「バス運行にかかる協議体」を設置して必要な路線の維持やサービスの提供に取り組むとしている。この仕組みは望ましい形と言えるが、もし“10年間の縛り”の中で、結局不採算路線の維持のために補助金を投入するだけになると、民営化の意味が問われることになりかねない。

少なくとも現状維持を図るにすぎない赤字補塡は避け、メリハリをつけた路線編成と路線ごとの位置づけを行い、市民も交えた責任分担により、みんなが当事者となって将来に持続する市域の公共交通ネットワークを構築することが望まれる。

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