いよいよあと3週間を切ったアメリカ大統領選挙

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民主党参議院議員・藤末健三

11月4日火曜日には、大統領選挙と上下両院選挙が同時に行われる。今までの推移を見るとほとんどオバマ優位になっている(最新の状況はhttp://www.realclearpolitics.com/などを)。

一時期(8月)、ロシアによるグルジア侵攻の際オバマがハワイで休暇中だったことと共和党の副大統領候補ペイリン(アラスカ州知事)の効果でマッケインが一時期逆転したが、その効果も長くは続かなかった。

個人の見解になるが、討論「DEBATE NIGHT IN AMERICA http://jp.youtube.com/watch?v=xJzq2A_Jx_g」などを見てもオバマの方が若くて元気な印象がある。「今回の選挙は、オバマの信任投票的なものとなる」とも言われているくらいオバマ優位となっている。

9月15日のリーマン・ブラザーズ破産申請に端を発する金融ショックが進行する中で、私は経験が豊富なマッケインに優位になるのではないかと考えたが、オバマの人気が高まっている。やはり、経済政策をあまり重視しないマッケインのイメージとブッシュ現大統領の対応の遅れが共和党の支持を下げているのかもしれない。

また、ペイリン知事が職権乱用を行ったとの報告が提出さえており、これもまた大きなマイナス要因となっている。

なお、米国の大統領選は、州ごとに、連邦議員議席数に相当する数の「選挙人」を取り合い(勝者がその州の選挙人を全員獲得)、その合計の多い者が大統領に選ばれる。つまり、選挙人総数は538なので、270選挙人を獲得すれば勝ちとなる。単純な人気投票だけで判断することはできないが、オバマ大統領の可能性は高まりつつあると言える。

10月15日に3回目の大統領候補のテレビ討論が行われたが、オバマ優位の情勢は変わらなかった。

現在の両候補者の政策を見てみると、両候補とも浮動票を意識し、中道的な政策を打ち出しており、金融対策で大きな違いが生じることはないと予測している(世論を気にして金融機関への公的資金注入に反対することはないと個人的に思っているが)。

イラク問題についてもオバマは当初すぐにでも撤退と言っていたが、現在では準備をきちんと行った上で撤退となっている。一方、マッケインもイラン駐留継続から状況を見つつ撤退と政策が変わっており、結局は両候補の政策に差は見られなくなっている。

初期段階ではそれぞれの所属党員にアピールするため極端な政策を打ち出すが、大統領選に入ると「無党派層」にアピールするため政策的な特徴がなくなってきている。これは今までの大統領選挙でも普通のトレンドのようだ。

このまま「チェンジ(変革)」をキーワードに、若さと演説のうまさと「初のアフリカ系大統領」といった魅力を前面に押し出したオバマが駆け抜けてしまうのであろうか。

選挙は伯仲する!

世論調査などでの人気を見るとオバマが優位であるが、州ごとの支持率の高い者がその州の選挙人のすべてを獲得するという、本番と同じ方式でのカウントによれば、9月22日時点においては、オバマ273対マッケイン265とわずか8選挙人の差でオバマがリードしているだけである。

この差は、小州(例えば、ニューメキシコ(選挙人数5)、ニューハンプシャー(同4)など)が1つでもオバマ支持からマッケイン支持にシフトすれば、結果が変わるというきわめて伯仲した戦いである。全部で10前後ある激戦州のうち、選挙人数が10を超えるペンシルベニア(21)、オハイオ(20)、ミシガン(17)、バージニア(13)といった大票田が、今後注目の的となる

ただ、今後の展開を考えたとき、前述の金融問題を除き大きなイベントやサプライズは起きにくいと考える。

世論調査は信頼できるか?

さて、最後に「世論調査は信頼できない」との指摘が出ている。まず、ひとつは、オバマは若者層に大きく依存しているが、若者は実際には投票に行かないのではないか?という点である。

そして、もっとも大きなファクターは「人種に対する国民感情」である。自分自身もアメリカにいるときにいやな思いをたびたびしたが、人種差別的な意識は大きくアメリカ社会に残っている。メディアや公的な場ではなかなか触れられることがないが、表に出ていない人種に対する国民感情が投票本番である程度オバマへのネガティブな要因となることは否定できない(アメリカのマスコミでも指摘はされるがそれがどの程度かは私が知る範囲では明確になっていない)。

以上のとおり、アメリカ大統領選はきわめて伯仲している。投票日当日まで全く予断を許さない状態となるであろう。

※この原稿を書くにあたり、米国駐在の友人の大きな助けをいただいたことに感謝を申し上げます。

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