住宅難の英国で増える「セクハラ大家」の行状 要求するのは「家賃」ではなく「性的な見返り」

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一方ガーディアンは4月2日、すでに住んでいる家で、大家に「家賃を下げるから」と言い寄られたり、家賃を滞納していた時に体の関係を迫られ、拒否したら追い出されたりしたケースなどを紹介している。

慈善団体レイプ・クライシス・イングランド&ウェールズのケイティ・ラッセル氏はガーディアンに対し、イングランドとウェールズの性犯罪法は性的な合意について、「その選択をする自由と能力がある時に、自分の意思で同意すること」と定義しており、「ホームレスになる恐れがある状況で、または住む場所を確保するという基本的な権利の交換として、誰かとセックスすることに同意することは、自分の意思で同意することと同じではない」と説明し、同意のない性的な行為は深刻な性犯罪だ、と述べた。

警察に届ける人は非常に少ない

しかし、このような行為を警察に届ける人は非常に少ない。ピーター・カイル労働党下院議員は2017年4月、大家がこのような行為を改めない場合は法の整備をしてこの問題を解決する、とBBCに強い口調で訴えていた。しかし同議員は前述のガーディアンに対し、この1年で有罪判決はおろか逮捕者さえも出ていないと語っている。

ガーディアンによると、無料クラシファイド広告サイト「ガムツリー(Gumtree)」にもこのような広告がつい最近まで掲載されていた。しかしガムツリー側はカイル議員と協議したことを明かし、現在はブロックするシステムがあるとガーディアンに説明したという。カイル議員はクレイグズリストにも改善を求めるために連絡を取っているが、なしのつぶてだと語っている。

(文:松丸さとみ)

「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

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