最先端技術を盛り込み“止まらない取引所”へ--鈴木義伯・東京証券取引所常務執行役(最高情報責任者、IT企画担当)

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最先端技術を盛り込み“止まらない取引所”へ--鈴木義伯・東京証券取引所常務執行役(最高情報責任者、IT企画担当)

今年に入ってシステム障害が頻発しています。7月22日には派生商品の売買が行えなくなり、大きな影響が出ました。現行のシステムは、なぜトラブルが多発するのでしょうか。開発を請け負っている富士通の体制に問題があるのでしょうか。

システムダウンに対して誰が責任を負っているのか、これははっきりしています。世の中に対して、サービスを提供しているのは東証。そのシステムを止めてしまったのですから、すべて東証の責任です。開発ベンダーのせいにして被害者面するつもりはありませんよ。

--今回の問題を受けて特命プロジェクトチームを発足させました。来年度稼働予定の次期システムの開発についても何らかの見直しを行ったのでしょうか。

システムづくりというのは、そんなものではありません。今回のシステム障害と次期システムの開発は、まったく別問題。次期システムでは、東証が詳細な設計依頼書(RFP)を書き、それに基づいて入札を行い、開発プロジェクトの細部にもかかわっています。富士通さんに完全にお任せしていた現行システムとは、そこが根本的に違います。

次期システムの出来、不出来は実は、もう決まっているのです。システムというものは、コーディング(=プログラム作成作業)をする前の詳細設計の段階で、ほぼすべてが決まってしまう。この段階で神様は、すでにいいシステムか悪いシステムか、わかっているのです。次期システムは、詳細設計の段階はもうとっくに終わっている。あとはしっかりとコーディングをし、テストを行うだけです。

--とはいえ、現行システムで何度も障害を起こした富士通に次期システムの開発を依頼していることに違和感を覚えます。

次期システムの入札を行った2006年の9月には、国内、国外のベンダー18チームが応募しました。今回、われわれはRFPを1500ページ分書いたが、海外のベンダーはこれに応えることができなかった。東証自体がグローバル化している時代ですから別段、海外のベンダーでもよかったのですが、証券取引というのは国ごとのローカルルールや規制が多いため対応が難しかった、ということです。

最後まで残った日本の某メーカーは、安定した技術を提案しましたが、拡張性の面で不安が残るということで採用できませんでした。それに対し、富士通はOSにリナックスを用い、IAサーバー(インテルのアーキテクチャーを採用したサーバー)を採用するというもので拡張性に優れていた。しかも価格の面でも非常に魅力的だった。東証のシステムをぜひやりたい、という強い意気込みを感じさせる提案でした。

こちら側の体制も以前とは大きく変わっています。ITが東証のコアコンピタンスであるという考え方は、私が来る以前も経営陣は理解していたが、どういう組織にするべきか、どのように人材を育成するか、という点で具体化できていなかった。そこで、IT部門が完全に独立して責任を持つ体制にした。これが、これまでとは大きく異なるところです。

--次期システムの特徴は?

最大の特徴は、処理スピードの速さと拡張性の高さにあります。現行システムでは、売買注文へ応答するのに1~2秒かかっていますが、これが10ミリ秒(100分の1秒)以内になります。また、今後増大が予想される海外からの取引と、パソコンによる自動発注などのアルゴリズム取引に対応すべく、1日に対応可能な取引量を大幅に増加させています。00年に稼働した現行システムは当初、1日に1000万件を想定していましたが、その後、度重なる拡張を迫られて苦労した。それに対し、次期システムでは、最初から1億~2億件を想定しています。拡張性も優れており、今までは処理能力を拡張する場合に5~6カ月かかっていたものが、次期システムでは1週間で対応できるようになります。

--億単位の注文を扱えるような取引所システムの前例はあるのでしょうか。

億まで処理できる、と言っているシステムはあるようですが、実際のところどうなのかはわかりません。それに対し、次期システムは1億どころか、最大1日9億件まで処理できる設計になっている。サーバーの数を増やしていくことで処理能力を上げられます。

--日本では、欧米と比べて取引所を通さないECN(電子証券取引ネットワーク)のシェアが低い。そのため東証に集中し、システムに大きな負荷をかけています。

市場で最も重要なことは価格の透明性。現段階で東京における株式の取引がECNではなく東証に集中しているのは、東証のほうが価格の透明性、利便性という点で高く評価されているからだと思います。

しかし、だからといって競争がないわけではない。今でも相対(あいたい)取引との競争があります。市場の要求に対して東証が勝てるように努力し続けなければ、取引は外へ出て行ってしまうでしょう。

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