最先端技術を盛り込み“止まらない取引所”へ--鈴木義伯・東京証券取引所常務執行役(最高情報責任者、IT企画担当)

--鈴木さんはNTTデータ時代に、複数の地方銀行が共同利用する「地銀共同センター」に取り組んでいました。東証のシステムと比べてどちらが難しいですか。

地銀共同センターは安定性が重要であり、技術的には最先端のものを使わなくてもいい。その代わり初期投資が400億円と大きく、5~6年かけないと回収できないため、資金調達力、経営の安定性がなければとてもできない。つまりマネジメントとしては非常に難しいものです。利用していただく銀行が集まらなかった場合には大きな損失につながるリスクもある。

一方、東証の次期システムは最先端の技術を使って、これまで世の中にないまったく新しいものをつくるというもの。かつ、必ず成功しなければならないという重大な使命を負っている。地銀共同センターとは違う難しさがあると思います。

--次期システムが稼働すれば、システムダウンはなくなりますか。

そもそもある銘柄へ短時間のうちに注文が集中した場合に、問題が発生しやすい。そのため、一定以上の注文量があったときに制限する仕組みを計算機の中に入れました。電話局を想像するとわかりやすい。電話の場合、ある局番への電話が過度に集中した場合は制限を加えてネットワーク全体を守るようにしている。それと同じです。

また本番システムのほかに二つの待機システムを設け、一つのシステムがトラブルを起こしても待機システムに切り替えることでシステムダウンを防ぐ仕組みになっている。三つのノードを使うことで信頼性を上げるシステムは世界初です。3ノードを実現するために、富士通は新しくミドルウエアを開発しました。

さらに、上場銘柄を七つから八つのグループに分けて分散処理し、1グループの処理件数が同じくらいの量になるよう調整します。これにより、最悪の場合にも1グループ分の銘柄の取引停止にとどまり、全銘柄停止という事態にはなりません。

次期システムは、一部の業務アプリは別として基本的なシステムについては、海外の証券取引所でも利用できます。そこで正式稼働後の2010~11年をメドに、提携するアジアの取引所などへの販売を考えています。コストの回収にもなりますし、それ以上に、東証のシステムが他国で使われている、という事実が大きいと思います。積極的に海外へ売り、世界中に仲間を増やしていく夢を持っています。

--トラブル続きで暗く沈んでいると想像していましたが、ずいぶんと積極的ですね。

みんなそんなふうに言うんだ(笑)。確かにトラブルは申し訳ないと思っているけど、それはそれ。シュンとなっていては何もできませんよ。


(麻田真衣 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)

すずき・よしのり
1972年に東京電機大工学部を卒業し、日本電信電話公社(現NTT)入社。金融システムなど大型案件のスペシャリスト。2006年、東証の最高情報責任者(CIO)に就任。

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