安倍政権がはまった「公文書疑獄」の底なし沼 「天網恢恢疎にして漏らさず」との声も
この「首相案件」と記載した備忘録文書に先行して、メディアの報道によって問題化したのが森友学園問題でのごみ撤去費をめぐる「口裏合わせ」と、自衛隊イラク派遣時の日報の隠蔽疑惑だ。
ごみ撤去費をめぐって財務省理財局が学園側に口裏合わせを要請していたとの報道については、太田充理財局長が9日の参院決算委員会で、理財局職員が2017年2月20日に森友学園側の弁護士に電話で地下埋設物の撤去について「費用に関して相当かかった気がする」「トラック何千台も走った気がする」といった言い方をするよう求めていたことを認めた。その上で太田氏は、「森友学園側に事実と異なる説明を求めるという対応は間違いなく誤った対応だ。大変恥ずかしいことで、大変申しわけない。深くおわび申し上げる」と平謝りした。
この問題ではさらにメデイアが「ゴミ撤去に関する学園の認識をまとめた文書を、理財局が近畿財務局に依頼して作成し、学園側に示した」と報道した点についても、太田氏は11日の衆院予算委集中審議で「好ましくない対応だった」と陳謝した。こうして次々と発覚する森友学園との土地取引に関する財務省に失態ついて、与党内からも「底なし沼のようだ」(公明党幹部)と嘆き節が聞こえてくる。
「イラク日報」問題で文民統制欠如の危機も
一方、防衛省も4月上旬に、それまで国会で「不存在」と説明していた陸上自衛隊のイラク派遣時の日報が多くの部署で見つかるという失態を露呈した。防衛相による日報探索の指示をないがしろにするような防衛省内部の対応は、大原則の文民統制(シビリアンコントロール)」の欠如にもつながる問題で、政府・与党内にも危機感が広がる。
菅義偉官房長官は記者会見で「1週間に3回も大臣が国民におわびする事態となったことを防衛省職員一人一人が重く受け止め、再発防止に向け真摯(しんし)に取り組む必要がある」と危機感をあらわにした。公明党の井上義久幹事長も会見で「文民統制上の観点で極めて深刻な問題だ。速やかに調査結果を公表すべきだ」と求めた。
このイラク日報の隠蔽疑惑が広がるという事態も、安倍政権にとっては極めて深刻だ。首相が「在任中の実現」を目指す憲法改正の最大のポイントは憲法9条への自衛隊明記だからだ。すでに自民党は3月下旬の定期党大会で「9条1、2項を維持しての自衛隊明記」を軸とする改憲条文の「たたき台」を確認している。しかし、なお党内での異論も根強いだけに、「実力組織の自衛隊」が起こした日報隠蔽問題は、今後の改憲論議進展の大きな障害になることは確実だ。首相も11日の集中審議で「シビリアンコントロールが問題になる」と苦悩を隠せなかった。
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