日韓の「パラアイスホッケー」で結ばれた絆 銅メダル獲得、韓国躍進の背景に日本の存在

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そんな日本と韓国は平昌パラリンピックでは同じリーグの初戦で顔を合わせた。結果は4対1と韓国が勝利し、その後、韓国は3位決定戦でイタリアを破り銅メダルとなった。日本代表は初戦から勝てず、8チーム中8位という結果だった。

最後の試合となったスウェーデン戦の後、リンクには大きくうなだれていた選手たちの姿がぽつねんと残った。

河理事が言う。

「選手がそれぞれ仕事を持ちながら、集まって練習することは本当に難しいことです。日本は今大会では振るいませんでしたが、最初にパラアイスホッケーを教えてもらった日本とはこれまでも共に歩んできました。これからも互いに切磋琢磨しながら共に先へ進んでいきたいと思っています」

そして、実は壮大な目標があるんですよ、と笑った。

「日本、中国、カザフスタン、オーストラリアなどでアジアンリーグを立ち上げることです。アジアが協力して互いに技量を上げていく。これは日本の関係者とも話を始めていて、次は北京でパラリンピックが行われますから、それに向けて近い将来、実現できればと考えています」

パラアイスホッケーの魅力を知ってほしい

また、韓国国内ではもう1つの実業団を創団して、つねに実戦できる環境をつくることを目標としているという。

江陵アイスホッケーリンクの外観(筆者撮影)

それにしても、駆け上がるように強くなってきた韓国のパラアイスホッケーの話を聞きながら、韓国はスポーツも経済と同じように圧縮成長したのだなあ、その糧は何だったのだろうかと河理事に問うと、

「選手はともかくメダルを取ることを目標にしてきましたから、かなあ」

そう言って、よくわからないと苦笑いしていた。

パラアイスホッケーの強豪は米国とカナダだそうで、これからアジア勢がどれだけ追いつけるだろうか。

アジア大会が実現すればパラアイスホッケーももっと身近になるかもしれない。まだ、目にしていなければぜひ一度パラアイスホッケーの試合に足を運んでこの魅力を知っていただければ、と思う。

菅野 朋子 ノンフィクションライター

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かんの ともこ / Tomoko Kanno

1963年生まれ。中央大学卒業。出版社勤務、『週刊文春』の記者を経て、現在フリー。ソウル在住。主な著書に『好きになってはいけない国』(文藝春秋)、『韓国窃盗ビジネスを追え』(新潮社)がある。

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