「グルテンフリー」で注目される新食材の正体 じわり浸透する米国発「ソルガムきび」

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中野産業が販売する商品は当初のソルガム粉からパン粉ミックスやパスタ、お菓子など数十種類に拡大。どれもが顧客の声を十分に吸い上げたものばかりだ。なかでもマカロニの開発が消費者に受け入れられる契機になったという。

消費者に浸透する契機となったマカロニ。食感も普通のマカロニと変わらない(写真:中野産業)

「ほかの子どもと同じようにマカロニを食べさせてあげたい」というある母親からの要望が、開発のきっかけだった。この母親にマカロニができたことを伝えると、「穴は空いていますか」と聞かれたという。「空いていますよ」と伝えると、この母親は「わが子に普通のマカロニを食べさせてあげられると、涙声でお礼を言われたことは忘れられない」(中野専務)。

中野産業は2017年11月、蒸しパンの販売を開始した。ソルガムきびをつかった商品は、何もアレルギーを持つ消費者に限ったものはない。蒸しパンは水を入れて電子レンジにかけるだけで食べられるようにし、手軽にソルガムきびを味わってもらえるようにした。

栄養価の高さも魅力

アメリカ穀物協会によると、日本でソルガムきびを常時扱っている企業などは25社と、まだ多くはない。とはいえ、この2~3年の間に徐々に広がっている。

ソルガムきびなどグルテンフリーの食事を求める外国人が多いホテルやレストラン・カフェなどでは、ソルガムきびを使用したメニューを提供するところが増えているという。穀物協会には家庭でもどんな料理を作ることができるかとの問い合わせも増え、同協会はホームページなどによるレシピの提供に注力している。

東京・下北沢のカフェレストラン「inning+」(イニング・プラス)では、ソルガムきび粉を使ったマフィンを提供している。マフィンは4種類、小麦粉を使った場合より栄養価が高く、人気メニューの一つだ。オーナーの米野智人さんは元プロ野球選手で、自身も健康のためにグルテンフリーの食事を中心にしている。レストランで提供できるグルテンフリーの食材を探していたところ、ソルガムきびを知ったという。

マフィンはソルガムきび粉に加え、玄米粉とアーモンド粉を使用。ソルガムきび粉を入れることで、小麦粉に近いふわっとした感じに仕上がる。また、表面もさくっとした食感を得られるという。「何よりも栄養価が高いことは魅力」(米野さん)。

2017年10月に大阪市でアメリカ穀物協会が主催した試食会とシェフによるデモンストレーションには多くの飲食・宿泊業関係者が集まるなど、ソルガムきびなどグルテンフリーの提供を真剣に考える業者が増えている。アレルギー対策の必要性と健康志向は高まり続けており、食卓でのソルガムきびの存在感も高まりそうだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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