イケてない男が一段と結婚できなくなる理由 誰もが結婚する時代がむしろ異常だった

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第二に、日本が格差社会に入ったことにより、若年・中年層の間で所得格差が拡大し、一部の若年・中年層の間で所得が低くて結婚できない、あるいは異性と交際ができないという人の増加が見られる。特に日本では男性に結婚・恋愛の経済負担の重圧がかかることが多いので、主に男性がこの問題で悩んでいる。

第三に、日本人の間に個人主義が浸透し、家族を持たなくとも人生を楽しむ手段が多く出現したことがある。さらに恋愛や結婚は、見知らぬ人と付き合うとか、一緒に住むことを意味するが、他人との付き合いが苦手という人が多くなった。人間関係で気を使うといったことで悩むよりも、一人で楽しむとか、あるいは同性同士の気楽な付き合いを好む人が増加している。

優秀な雄を求める自由

第四に、女性が社会に出て働くことがごく一般的なことと考えられる時代となり、所得のある女性(特に高所得の女性)に結婚への希望度が低下した。あるいは経済力を得たことによって、女性の男性に対する要求が高くなった、すなわちより魅力的な男性を求めるようになったことも、男性と女性のミスマッチが顕著となった理由である。

これは動物の雌が優秀な雄を求める姿と一致していると解釈したい。すなわち、動物では雌の保有する卵子が数少なく貴重であるのに対して、雄の放出する精子の数は何億とあるので、やや誇張すれば1つの卵子をめぐる精子間の競争は激烈であるとの事実の人間版と解釈してよい。

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第五に、世界の多くの国で結婚・家族・社会の変化が大きく見られるが、日本の歴史を見ると欧米で発生している変化が、数十年経過してから影響を受けて日本で発生するという現象が多い。たとえば、離婚率の上昇、性の自由化、若者の失業率の高さ、女性の労働力率におけるM字カーブのへこんだ部分の上昇など、枚挙にいとまがない。

このように、未婚者が増加し、「一生独身」の男性が増え続ける一方で、子どもへの教育費は高騰し、「質の高い子ども」を親が求める傾向にあると言われている。もし優秀な雄(男)への要求が高まり、質の高い雄は厚遇され、質の低い雄が冷遇されるという二極化の世界になれば、冷遇される立場になった雄は、駄馬のようにひたすら汗水たらして働くしか生きる道はなくなるかもしれない。

そしてそういう男性は一生懸命働いて経済を強くするだけに貢献し、優秀な男性のみが女性と接触できて、子孫の繁栄に貢献する世の中になるかもしれないのである。

橘木 俊詔 京都女子大学客員教授、京都大学名誉教授

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たちばなき としあき / Toshiaki Tachibanaki

1943年生まれ。小樽商科大学卒業、大阪大学大学院修士課程修了、ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。大阪大学、京都大学教授、同志社大学特別客員教授を経て、現在、京都女子大学客員教授、京都大学名誉教授。その間、仏、米、英、独の大学や研究所で研究と教育に携わり、経済企画庁、日本銀行、財務省、経済産業省などの研究所で客員研究員等を兼務。元・日本経済学会会長。専攻は労働経済学、公共経済学。
編著を含めて著書は日本語・英語で100冊以上。日本語・英語・仏語の論文多数。著書に、『格差社会』(岩波新書)、『女女格差』(東洋経済新報社)、『「幸せ」の経済学』(岩波書店)ほか。

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