大和ハウスと積水ハウス「異例人事」のワケ いずれも非「住宅事業たたきあげ」社長が就任

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両社に創業以来のコアである戸建て住宅営業の経験がない新社長が誕生したことは、新時代到来を感じさせる出来事である。両社はすでに戸建て、集合住宅からなるコア事業により依存しない「非住宅」事業の育成を図ってきたが、その動きがさらに強まると考えられるからだ。

2人の大物の引退が近づいてきた

新体制発足には、さらにもう1つのインパクトがある。それは、大和ハウスの樋口武男会長、積水ハウスの和田相談役(4月末の株主総会で取締役も退任予定)という、20年ほどにわたり、それぞれの企業と住宅業界を牽引してきた大物の引退が近づいてきたということだ。

樋口氏は創業者の石橋信夫氏が死去した後、2001年にその遺志を引き継ぐかたちで社長に就任。以来、賃貸住宅や流通店舗などの事業強化、海外事業やエネルギー事業など幅広い事業展開を図り、住宅業界ナンバーワン企業に成長させた。大和ハウスの前年度(2017年3月期)決算は売上高3兆5129億円、経常ベースで8期連続増益を達成するなど、業績は至って好調である。

和田氏は1998年の社長就任以来、本業の住宅事業で高級ハウスメーカーとしてのポジショニングをより堅固なものにしたほか、2008年に会長に就任すると社内では海外事業の育成、ラグジュアリーホテル事業などの多角化を推進。最新決算はまとまっていないが前年度(2017年1月期)決算では、売上高2兆0269億円と初の2兆円台を達成、営業利益は1841億円(4期連続過去最高)で好調だ。

両氏は一般社団法人住宅生産団体連合会、同プレハブ建築協会の会長・副会長職を改選期ごとに交替し就任するなど、住宅業界のリーダー役を担ってきた。中でも、2011年3月に発生した東日本大震災の際には、応急仮設住宅建設も含めた住宅の復旧・復興に向けて業界の先頭に立ち、政界や行政との調整に精力的に動いていた。

住宅業界は少子高齢化による住宅需要の減少、さらには消費者のニーズの多様化などにより大きな転換点を迎えている。両氏は自社グループだけでなく住宅業界の変革を牽引してきた存在でもある。

たとえば、ストック(中古)住宅流通の活性化やリノベーション事業の育成といった施策を同業他社やほかの業界との協調を図りながら進めてきた。だから、大和ハウスと積水ハウス以外でも両氏へ強い信頼を寄せ、評価する人たちは大変多い。このような活躍が評価され、両氏は政府から旭日大綬章も授与されている。つまり、両氏はそれぞれの企業だけでなく、住宅業界の構造改革にも影響を与えてきた。

ただし、樋口氏が会長を退任するタイミングは少し先になるかもしれない。芳井氏は就任したばかりであり、退任には社内外の調整とそのための時間が必要と考えられるからだ。

とはいえ、樋口氏は今年で80歳になる。「最近は団体パーティなどで、弱気な発言をするなど身体的な衰えが目立つようになった」(住宅業界関係者)との声も聞かれる。和田氏の会長退任が、自身の退任の引き金になることはそううがった見方ではないだろう。

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