トヨタと日産がCESで見せた将来への布石 使い手の発想次第で広がるインフラ構想
たとえば、「この状況ならもう少し車線の右側を走ってもらいたい」とか、「このシーンであればもう少し早めにハンドルを切り出してもらいたい」といった場合、小さなヘッドギアを着けて、脳の運動野の脳波を測り、違和感を検知しながら、その違和感が少なくなるように人工知能が微修正を加えながら運転してくれる。簡単な話が、自動運転をよりスマートに、気持ちよく使えるようになる。
この技術の特徴は、拡張性にもある。たとえば自動運転ではなく自分で運転しているときでも、ハンドルを切るなど何かの操作をした際に、反応が悪いなどの思ったように動かないといった違和感を得るときもある。それを読み取り、クルマ側の設定を変えるなどして気持ちよく運転できるようになる可能性も秘めており、説明を深く聞くほどにその将来性や優位性を感じた。
「e-Palette Consept」とは
そしてもう一つのJapanパワーが、CESでトヨタ自動車の豊田章男社長みずから発表した「e-Palette Consept」だ。
この構想はEVの将来戦略とかそんな限定的な話ではなく、トヨタから社会に対しての、移動や物流そして物販なども総合的に担えるインフラプラットフォームの提案と捉えると良い。
提供するのは、土台となるタイヤが着いたパレット(モビリティサービスプラットフォーム)だけ。当然、電動化技術が盛り込まれ、拡張性の元になるコネクテッド技術、そして自動運転技術が盛り込まれることで、パレットは自由に自在に動く。そして、そのパレットをどのように使うかは、利用者(サービス提供者)の自由。バスのような公共交通機関、ライドシェアできるクルマ、移動式のお店や移動式オフィス、介護サービス提供や飲食サービスなど、可能性は無限大ともいえる。
トヨタはこれに車両インターフェースを開放して、他社の自動運転制御キットも使えるようにするという。そのモビリティサービスプラットフォーム上でそれぞれのサービス事業者がソフト開発するうえでも必要となるAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)も開放した。
これはアップルやグーグルがスマホで「アプリは自由に開発してください」というようなスタンスと同じだ。すでにインターネット販売最大手のアマゾンや移動サービスで勢いのあるUber(ウーバー)、中国の移動サービス大手のDidi Chuxing、宅配飲食サービスのピザハットなどを初期提携パートナーとして組んでいる。
そのパレットも大きさなど用途に合わせて数種類もあるようだ。「移動」することにすべて適応したいという戦略に見える。たとえば、自宅までラスト1マイルをケアする小さな1人乗りモビリティプラットフォームの構築も視野に入っているのだろう。トヨタは発電機に適した内燃機関技術を持つマツダと提携していることから、電気が潤沢にない地域での使用も意識しているに違いない。
可能な限り制約を排除して、使い手の発想次第で可能性を無限大に広げられる「移動」社会インフラを提供する――。コンセプトは壮大だが、まずはできる場所でできることから導入していくという、実際の社会に適合させていく。e-Paletteの発想が盛り込まれた“もの”が、東京オリンピック・パラリンピックにて、地域は限られるだろうが動き出すようだ。
将来を見据えて動いているのは日本だけではないが、今年のCESでは日本勢の底力を確認できた。
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