小室さんの「不倫叩き」をする人たちの脳の中 実は「人間の脳の仕組み」がそうさせている
また、「プレーリーハタネズミ」と「アメリカハタネズミ」という、近縁の哺乳類を用いた、こんな実験もあります。近縁とはいえ、両者はとても異なった行動をとります。プレーリーハタネズミは一夫一婦型なのに対し、アメリカハタネズミは乱婚型なのです。
両者の、中脳におけるAVPRの発現密度を調べると、プレーリーハタネズミはたくさんあるのに、アメリカハタネズミは少ないことがわかっています。アルギニン・バソプレシンは交尾の最中にオスの脳で分泌されメスへの愛着を形成することが知られています。そのため、AVPRが多くてアルギニン・バソプレシンのシグナルを受容しやすいプレーリーハタネズミは、一定のパートナーに愛情を注ぎ続けることができるのだと考えられています。
そこで、乱婚型のアメリカハタネズミの脳にたくさんのAVPRを発現させると、一夫一婦型の婚姻形態をとることがわかりました。
我々、哺乳類はすべて「種を残す」ことを目的とし、その道を選んでいます。一夫一婦型では、「自分たちの共同体(家族)を守る」ことが種の保存に必須と考えられます。夫婦で協力し合い、時に邪魔をするものと戦うことで子どもを育てていきます。一方、浮気性の人たちや乱婚型の動物は、少しでも多くの個体と交わることで、いろいろな形で自分の遺伝子を残そうとしています。
「二つの制度」がぶつかることは、人間特有の現象
方法は違えども、どちらも種の保存を第一に考えているわけです。このとき、一夫一婦型の人たちにとって、浮気性の人たちは脅威となります。自分たちが守っている共同体に介入してきて、ルールを壊すかもしれないからです。このように、「二つの制度」がぶつかることは、人間特有の現象と言えるでしょう。
動物の場合は、一夫一婦型なら一夫一婦型、乱婚型なら乱婚型と種類ごとにルールが決まっており、そのルールの中でパートナーを求めて争うにすぎません。ところが、人間はそうではありません。一夫一婦というルールの下でペアをつくっておきながら、乱婚型の行動をとってしまう人がままいます。それは、一夫一婦のルールを厳格に守っている側の人間からすれば、とてつもない脅威なのです。だから、不倫は徹底的に糾弾されてしまうのです。
それにしても不思議なのは、「ベッキーさんがあなたの夫の浮気相手でもないのに、なぜそこまで怒るのか」ということではないでしょうか。不倫騒動があると、まさに老いも若きも男も女もいきり立ってその対象をバッシングします。こうした攻撃が度を越したものになっていくのは、向社会性という一見「正しいもの」に暴力的な力が潜んでいるからです。
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