江東区民の悲願、「豊洲-住吉間地下鉄」の成否 区の報告書にメトロへのメッセージが?

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江東区は隅田川と荒川に挟まれた場所に位置し、大手町から区役所付近までは5~6kmほど。区内を南北に貫く四ツ目通りは多くの人やバスを中心とした車であふれている。また、豊洲ではIHIの造船所や工場が移転し、跡地ではまちづくりが進み人口が増加している。そんな中で「区の内陸から豊洲へ、また東陽町へ」という移動が必要になってきたと、平川進・江東区土木部地下鉄8号線事業推進担当課長は言う。平川担当課長は、「区の南部が大きく開発されており、(内陸と)結び付けたいという考え方がある」という。

江東区の南北を移動する手段である都バス(筆者撮影)

この地域は都バスの利用が比較的多い地域だが、「バスよりも鉄道の輸送力は大きい。また(鉄道を)つなぐことで、東部の交通網に大きな影響がある」と平川担当課長。通勤時間帯の都営バスには積み残しもある。また、東陽町周辺には企業が多く立地し、そういった場所に豊洲をはじめ、各地域から通いやすくするためには鉄道が必要だという。全国でもトップクラスである、東京メトロ東西線の混雑を緩和するという目的もある。

東西線混雑緩和にも効果

では、地下鉄を造ることでどの程度の効果が見込めるのか。江東区は、2017年3月に発表した「東京8号線(豊洲―住吉間)整備計画調査報告書」の中で、豊洲―住吉間の輸送人員を1日当たり27万8000人、1年間の運輸収入を58億3000万円と予測する。

混雑緩和効果についても、東西線の最混雑区間(木場―門前仲町間)の混雑率を195%から177%(いずれも2030年の予測値)に抑えることができるとしている。また、区内の湾岸エリアを走るJR京葉線の最混雑区間(葛西臨海公園―新木場間)の混雑率も、182%から171%(2030年の予測値)へ抑えることができるという。

豊洲―住吉間を整備することにより、鉄道利用が不便な地域を解消するだけではなく、南北を結ぶ鉄道の軸ができるというメリットもある。東京の南北を貫く西側の軸は湘南新宿ライン、中央の軸は上野東京ラインがあるが、東側の南北移動はあまり整っていない。

埼玉方面から南下してくる東武スカイツリーライン(伊勢崎線)と東京メトロ半蔵門線に、住吉―豊洲間の地下鉄を結び付ければ、東側にも南北の軸ができる。さらに、豊洲から臨海部を走るゆりかもめやりんかい線へもつながっていく。こういった軸ができれば、現在は不便な東京東部の南北移動も便利になる。

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