JR九州「春の大規模減便」は本当に深刻なのか ローカル線本数減で「日常の足」不便になる?

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そのためか、減便をめぐる報道への沿線住民たちの反応は意外と冷静なのだ。肥薩線で乗り合わせた人吉市内で暮らす60代の女性は次のように話す。

「普通列車がなくなると、そりゃ少しは不便になるとは思うけど大きな影響はないでしょう。特急列車がなくなるわけでもないですし。実際、乗り降りする人なんて特急の停車駅だけですから。もちろん、特急料金を払わなきゃいけなくなるとか、そういう問題もあるけど、しょうがないですね」

別の男性も言う。

「主な町を結ぶ役割なら特急でも充分。観光列車はいつも賑わっているけど、ほかの列車はガラガラだからね。通院とかで使っている人はいるけど、それさえ補う手段があるならみんな減便にもすぐに慣れると思いますよ」

つまり、鹿児島本線など主に都市圏を通る路線ならまだしも、もとより利用者の少ないローカル線では今回の減便、言うほどの影響はなさそうというわけだ。

「廃線へのきっかけ」を懸念

では、何が問題なのか。ある減便対象路線の沿線自治体関係者は、「最も懸念しているのは、今回の減便が廃線の議論につながること」と打ち明ける。

「JR九州の株式上場・完全民営化で心配していたのは合理化によって利便性が損なわれること。それが今回のダイヤ改正で現実のものとなった。『はやとの風』の臨時化や特急『きりしま』のワンマン化、無人駅の増加などもそう。利用者の多い通学時間帯の列車こそ確保されていますが、それは最低条件。減便で利便性が損なわれれば、一層利用者離れが進む懸念もあります。で、結果として廃止の方向に進む。それだけは避けたいところです」

確かに、都市圏の路線なら多少の減便でも利便性が大きく低下することはない。一方で、ただでさえ本数の少ないローカル線は減便によって利用できる列車がほぼ通学時間帯に限定され、日中に数時間も列車間隔が空くなど利便性は極めて悪化する。これが利用者数のさらなる減少につながり、廃止やむなしの方向に議論が進む可能性も捨てきれないだろう。

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