意外と知らない「宮崎駿作品」の読み解き方

ヒューマニストだというのは誤解?

しかし1989年には、ファミリー層を取り込むことに成功した『魔女の宅急便』、1992年の『紅の豚』と立て続けにヒットを飛ばし、スタジオジブリと宮崎駿はヒットメーカーとして認知されるようになっていきます。

一方、映画制作のために何度か中断していた原作コミック版『風の谷のナウシカ』も1993年に連載を再開し、ついに完結します。最終刊を読んで、僕はひっくり返るくらい驚きました。

「腐海が役割を終えたあとにやってくる平和な時代」を宮崎駿は否定しているのです。

原作版『風の谷のナウシカ』を読むと、その衝撃は伝わってくるでしょう。ラストで描かれたのは、散々に迷い、試行錯誤した末にたどり着いた、宮崎駿の結論だと筆者は思います。

すべてをさらけ出した最高傑作『風立ちぬ』

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原作版『風の谷のナウシカ』を完結させたあとに宮崎駿が手掛けた長編作品が、1997年公開の『もののけ姫』。物語の構造的には、『風の谷のナウシカ』の続編、というかリメイクになっています。原作版『風の谷のナウシカ』を描ききったからこそ、『もののけ姫』をエンターテインメントに昇華して、強いメッセージを生み出せたのでしょう。

その後、最大のヒット作『千と千尋の神隠し』(2001年)、『ハウルの動く城』(2004年)、『崖の上のポニョ』(2008年)を経て、2013年には『風立ちぬ』を世に送り出しました。

僕は、この『風立ちぬ』が宮崎駿の最高傑作長編だと考えています。堀越二郎をモデルにした戦闘機開発物語であり、二郎とヒロイン菜穂子の悲恋の物語です。美しいものにしか興味がない二郎と、そういう非人間的な二郎を愛してしまう菜穂子。2人の歪な恋愛模様が、登場人物の「演技」によって見事に表現されました。

『風立ちぬ』では貧富のピラミッドが歴然とした世界を描いていますが、二郎はピラミッドの上層で自分の夢を追求しつづけます。そのすばらしさと残酷さ、そして夢を追った二郎が最後に得る「赦し」。これは、アニメ作家として作品をつくり続けてきた宮崎駿の内面そのものでしょう。宮崎は、『風立ちぬ』で自分のすべてをさらけ出したのです。

けれどまた、新しい世代や技術の刺激を受けて、宮崎駿のなかでは新たに何かが動き出しました。長い思索と表現の道を歩み続けてきた宮崎は、僕たちにどんな物語を見せてくれるのでしょうか。

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