日本で「多様な生き方」がしんどい根本理由 パリに暮らして初めて見えてきた

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その答えは、他人や社会の中にあるわけではなく、自分の中にしかない。当初はとまどったが、周りにはあらゆる多様な生き方を実践しているパリジャンのサンプルがゴロゴロいたので、「あれはいいな、これはいやだな、こんなのもありなのか!」と、自分の基準を確かめるのに参考にすることができた。

30年間という月日でしみ着いてしまった、王道の基準を参考にする習慣を改め、自問自答する習慣を身に付けることは簡単なことではなかった。チリが積もるように少しずつ、忍耐強く確かめてゆく訓練のようなものだった。

鬱々した気分になることが減った

こうして数年経過した頃、自分に変化が起きていることが分かった。

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それまでは、フェイスブックなどSNSで他人の生活をのぞいた際、自分と他人を比べて、鬱々とした気分になっていたのだが、その回数が減っていることに気が付いた。鬱々となる一歩手前で、「でもそれ、本当にうらやましいと感じるか?」と、ワンクッションおいて、自問自答する習慣が身に付いたのだ。結果、むやみに他人と比べて嫌な気分になることが減った。

ここ最近は、肩の力を抜いて気楽に生きている、と実感できている。多様な価値観やシステムがある社会の中で生きることは、他人のわがままと付き合うことでもあり、嫌な思いをすることもある。が、同時に自分目線で見れば、自分のペースで生きられるということでもあり、とても自然で心地がいい。

とはいえ、日本人がパリジャンのように極端にわがままな自分を持つことはオススメできない。が、これまで社会、世間、他人の基準に自分を合わせていた習慣を、自分に合わせるように意識してみてはどうだろうか。

足元ではさまざまな生き方が出てきているのに、誰もが参考にする基準が1つだけでは、これからの日本はますます多くの人にとって生きにくい環境になりかねない。けれど、多くの人が世間ではなく、「自分」を意識して生きていけるようになれば、本当の意味での多様で、ワクワクできる社会が訪れるのではないだろうか。「自分」を意識するというのは、自分と、そして、他人を尊重するということでもあるのだ。

中村 綾花 ラブジャーナリスト、ライター

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なかむら あやか / Ayaka Nakamura

1980年福岡県生まれ。県立長崎シーボルト大学(現・長崎県立大学シーボルト校)国際情報学部情報メディア学科卒。2010年に「世界婚活」プロジェクトを立ち上げ、世界婚活の旅へ。2012年、世界婚活中に出会ったフランス人と結婚し、現在はパリにてLOVEを調査中。その軌跡をまとめた『世界婚活』(朝日出版社)が好評発売中。日仏カップルや、現地のフランス人・日本人にインタビューをする日々。パリを案内するプライベートガイド「パリジャンガイド」としても活動中。

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