「党首討論なし」「首相は逃げ恥」では酷すぎる 傲慢自民に混乱野党で、国会は機能不全に

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今年2月に発覚した森友問題の国会での疑惑解明がまったく進展しない中、特別国会後半の11月22日には、会計検査院が、疑惑の核心とされる約8億円値引きでの同学園への国有地売却について、「値引き額の根拠がなく不適切」などとする厳しい検査結果を報告・公表した。

「絶好の攻撃材料」と勇み立った野党側は、11月27日からの衆参予算委員会やその後の関係委員会での追及を強め、通常国会の段階から取り上げられていた財務省近畿財務局と籠池泰典前森友学園理事長との価格交渉をうかがわせる音声データについて、財務省に「本物」と認めさせた。しかし、会計検査院が「不適切」と指摘した大幅値引きについては、国会答弁で「価格算定は適正」と繰り返してきた首相や麻生太郎財務相が、「所管官庁の適正との報告を信用してそう申し上げた」などと開き直り、野党の謝罪要求も無視したが、野党側は二の矢を放てなかった。

会計検査院が、森友問題での首相や昭恵夫人への忖度の有無などについては「検査の対象外」としていっさい触れなかったこともあり、首相らは人気テレビ番組によって流行語ともなった「逃げるは恥だが役に立つ」という"逃げ恥"作戦を決め込んだ格好だ。これに対し、野党側も独自調査による追及材料発掘への努力不足が際立っており、「年明けの通常国会での徹底追及」(立憲民主幹部)も掛け声倒れに終わるとの見方が広がる。

野党側も党首討論を想定せず?!

そうした中、通常国会に続いて特別国会でも党首討論の開催が見送られた。首相と野党党首の差しの勝負となる党首討論は、2012年11月に、当時の野田佳彦首相(民主党)が安倍自民党総裁との対決で突然、衆院解散を宣言するなど、「政局大転換の舞台」となった実績もある。しかし、第2次安倍政権発足後は年1~2回の開催となり、とうとう今年は制度発足以来初の「開催ゼロ」となった。

現在のような衆参両院の国家基本政策委員会合同審査会での党首討論がスタートしたのは2000年通常国会。国会での政策論議を官僚主導から政治家主導にするのが狙いで、英国下院議会の「クエスチョンタイム」がモデルだ。小沢一郎氏(自由党共同代表)が自民党幹事長時代に提案したもので、導入当初は「国会改革の切り札」として国民からも期待された。しかし討論時間が合計45分間と短いこともあって、首相と野党党首の「言いっ放しのすれ違い」(野党幹部)に終わるケースが多く、野党側も首相追及の時間が十分確保できる予算委での質疑を優先するようになった。

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