ロンドン地下鉄「駅ナカライブ」には掟がある 誰が自由に「腕自慢」をできるわけではない

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ロンドン地下鉄の演奏スポットは30カ所以上設けられており、毎週1800もの演奏枠がある。しかし、稼ぎのいいスポットは予約オープンからわずかな時間で一気に埋まってしまう。

演奏スポットには「ライセンスを受けたバスカーがこの駅で合法的に演奏しています」と明示されている(カナリーワーフ駅で、筆者撮影)

最もバスカーたちに人気が高いのは、「ピカデリーサーカス駅のピカデリー線への通路入口横」だとされる。コメントをくれた男性バスカーは「週末の日中にうまくここを確保できると1セッション(2時間)で100ポンド(約1万5000円)得ることも夢ではない」と稼ぎのよさを強調する。

ただ、客の行き来が少ない、時間帯がよくないといった悪条件が重なると、「2時間で数ポンドの稼ぎにとどまる」こともあるそうだ。やはり演奏スポットの良しあしで稼ぎはずいぶんと違ってくるわけだ。

「旅先で旅費を稼ぎたいから」と駅や広場での演奏を企てる若者は欧州にも大勢いる。ネットの書き込みを読んでいくと「どこどこへ旅行する予定があり、駅などでの演奏で小金を貯めたいがどうしたらいいだろう?」といった問いかけも結構見つかる。しかし、回答はいずれも冷たい。なぜなら、ロンドンに限らず、パリやローマなど欧州主要都市の地下鉄事業者は構内でのバスキング希望者に対してオーディションを行ったり、ライセンスを交付したりと管理強化の方向に向かっており、簡単に旅行者が演奏を試す環境にはなっていない。

管理が甘い鉄道に演奏家が集まる

一方、管理の甘い鉄道事業者があると、そこにミュージシャンが集まる傾向が当然の事ながら強くなる。

パリ地下鉄の車内で演奏するミュージシャン。チップをはずむ乗客が目立った(編集部撮影)

筆者が気にかけているルートの1つは、パリ・シャルルドゴール空港と都心を結ぶ郊外電車RER「B線」で、列車に乗り込むと必ずと言っていいほどアコーディオンやサックスを持ってチップをねだる演奏家がどこからかやって来る。それなりにうまい演奏なら旅の1コマとしてビデオに収めたい気にもなる(もちろん、チップをはずんだうえのこと)が、時々は障害者がつらそうに乗客のもとにやって来たりと、なんとも居たたまれなくなることもある。

日本から欧州にやってきた旅行者の中には、「電車に乗って大音量の音楽を聞かされるのはたまったものじゃない」と思う人もいることだろう。こういったパフォーマンスへの対応に慣れていない日本人の中には、うるさくてつらい状況に耐える人もいるようだ。

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