トランプ-安倍会談に見た蜜月の微妙なズレ 対北朝鮮、アメリカは抑制的に転じた

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そのトランプ氏が訪日の際に、金正恩氏を名指しで攻撃することを控え、さらに北朝鮮の人々を「すばらしい」とまで、褒めたのはなぜなのか。

伏線は前日にあった。

日本時間の11月5日早朝、ハワイから日本へと向かう大統領専用機「エアフォース・ワン」の機中で、トランプ氏は突然、記者たちの席のそばにやってきて、簡単なインタビューに応じた。

記者から「アジア歴訪中も、北朝鮮に対する強硬なレトリックを続けるのですか?」と聞かれたトランプ氏は、質問には直接答えず、「私たちは、問題を解決したいと思っている。これは米国と、世界にとって大きな問題であり、私たちはそれを解決したいと思っている」という慎重な言い回しに終始した。

さらに、記者から「北朝鮮の人々へのメッセージは?」と問われたトランプ氏は、「彼らはすばらしい人たちだと思う。彼らは、勤勉だ。彼らは、温かい人たちで、世界が知っているよりもずっと温かい人々だ。彼らはすばらしい人々だ(I think they’re great people. They’re industrious. They’re warm, much warmer than the world really knows or understands. They’re great people. And I hope it all works out for everybody)」とも語ったのだ。

だからこそ、11月6日の東京での記者会見で、トランプ氏に同行してきたロイター通信の記者は、「あなたは、昨日、北朝鮮の人々の温かさについて語りましたね。金正恩氏に対してはどんなメッセージを送りますか」と聞いたのだ。しかし、同時通訳の日本語では、この「温かさ」という部分はうまく訳されてはいなかったようで、日本語で聞いていて、質問の趣旨がわからない人が多かったのではないだろうか。

この質問に対して、トランプ氏は、すでに記したように、「北朝鮮の人々は、すばらしい人たちだ」「すべてがうまくいくことを望んでいる」と、エアフォース・ワンで語ったのと同じような言葉を繰り返したのだった。

「貿易問題」に比重を置くトランプ氏

安倍首相とトランプ氏の認識の微妙なずれは、会見の約3時間前の昼食会の冒頭から、見え隠れしていた。

11月6日正午過ぎの昼食会冒頭、安倍首相が、北朝鮮問題やほかの課題について率直に話し合いたいという意向を示したのに対し、トランプ氏は「われわれは、貿易問題について話し合う。われわれは、北朝鮮問題について話し合う。われわれは、軍について話し合う。私は、あなたがたが、米国製の軍の装備品やほかのものを購入してくれることに感謝している」と答えた。

安倍首相は、「北朝鮮」に重きを置いたのに対し、トランプ氏は「貿易問題」「北朝鮮」という順で話していた。

それは昼食会を終え、午後1時半過ぎに日米首脳会談が始まるときも同様だった。

安倍首相は会談の冒頭で、「先ほどのワーキングランチでは、北朝鮮問題を中心に国際的な課題について、大変深い議論ができたと思う。この首脳会談では引き続き、国際情勢、また経済問題、2国間関係について議論したい」と、北朝鮮問題を中心に言及した。

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