村上世彰氏、黒田電気との復帰初戦で「勝利」 外資系ファンドがTOB、3年越しの対立に幕

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今年6月の総会では通商産業省(現・経済産業省)時代の先輩である安延申(やすのべ・しん)氏を社外取締役に推薦し、可決された。一方で細川浩一社長は、54%台という上場企業で最も低い賛成率で再任された。この低い賛成率が、TOBを急ぐきっかけとなったのかもしれない。

そして8月にはMBKと村上氏側が協議に入る。一度は価格や税制面で折り合わなかったが、二度目の交渉で村上氏側はMBKのTOBに応じることになった。

村上氏側の「思うつぼ」

実は、MBKが黒田電気に最初に接近したのは2015年10月と早い。最初からTOBによる非上場化の提案だった。村上氏との“休戦期間”中は、TOB自体も棚上げになっていたようだ。

黒田電気は村上氏との対立を避けるため、海外ファンドのTOBに賛同したことになる。M&Aに詳しい服部暢達・早稲田大学大学院客員教授は「同業他社などと比較すると黒田電気の企業価値は1株2000円程度が妥当。3割強のプレミアムを払って出ていってもらうとは、村上氏側の思うつぼだ」と指摘する。

これで黒田電気の危機が去ったわけではない。黒田電気は韓国サムスン電子との取引停止もあり、業績が低迷している。今後MBKからは業績改善の圧力を受けることになり、改善が進まなければ、細川社長らは簡単にクビをすげ替えられるおそれがある。

村上氏は黒田電気で得たキャッシュを何に向けるのか。関連会社が海運最大手・日本郵船の株を5%保有し10月31日には大量保有報告書を提出した。今度は、海運業界には再編が必要だと主張するのだろうか。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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