ゾゾタウンが独自ブランドに手をつける事情 前澤社長がこだわるのは「究極のフィット感」

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ただ、ゾゾタウンに出店するブランドからの手数料収入で成長してきたスタートトゥデイにとって、約6000に及ぶ出店ブランドと自社PBが競合すれば、結果的に利益相反となりかねない。

前澤社長も「デザインや価格の面で競合しないことを心掛ける」と強調する。PB商品のラインナップをベーシックアイテムとするのは、トレンドに合わせたデザイン性の高い商品を取り扱う出店ブランドと競合させない狙いもあるようだ。

在庫を抱える商売ではない?

スタートトゥデイの前澤友作社長。「PB生産は世界中の工場と提携する」と言及した(写真:スタートトゥデイ)

一方、懸念されるのが在庫リスクだ。ゾゾタウンの主力は一定量の在庫を委託形式で預かり、オンラインショップの運営管理を行う受託事業。そのためスタートトゥデイが出店ブランドの売れ残った在庫を抱えることはない。

PBの場合は自社でコストをかけた商品が売れ残れば在庫の処分につながり、収益を圧迫する可能性がある。ファッション業界は、天候やトレンドの変化によって商品の売れ行きが大きく左右される。売れ残った在庫を大幅値引きして販売し、粗利率の悪化に苦しむアパレル企業は少なくない。

こうした懸念について前澤社長は「在庫を大量に抱えてリスクを背負う商売にはならない。(PB販売が)始まってみれば、すぐに理解していただける」と述べ、事業展開のあり方について含みを持たせる。

PBの特徴について「究極のフィット感」をうたっている点を考慮すれば、大量生産をせずにオーダーメードなどのシステムを取り入れた商品展開もありうる。とはいえ、これまでとは大きく異なる新事業の立ち上げとなるだけに、経費コントロールや在庫管理を徹底できるかは未知数だ。

スタートトゥデイの2017年度上半期は売上高426億円(前年同期比35.3%増)、営業利益138億円(同30.6%増)で着地。通期では売上高1000億円(前期比30.9%増)、営業利益320億円(同21.7%増)と、いずれも過去最高を見込む。

国内のファッション市場を席巻してきたスタートトゥデイだが、前澤社長肝いりのPB投入はどのようなインパクトを与えるか。その全貌が明かされる日が近づいている。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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