マラウィ「イスラム過激派掃討」の恐ろしい話 ミンダナオ島現地取材でわかった市民の犠牲
マラウィは標高700メートルのラナオ湖畔にある人口約20万人の地方都市。バンサモロの中でもイスラム文化が色濃く、湖岸にモスクが散在する風景は神秘的で美しい。何度か来たことがあるマラウィを再訪すると、古びて雑然としながらも活気があった市街は静まり返っていた。
小さな商店や住宅が密集する市街南東部の下町は、最後まで激戦が続いたエリア。不発弾などが残っているとして、戦闘終結後も政府軍が完全封鎖している。地区の住民は全員退避させられ、検問所から眺めた大通りには人影がまったくなく、文字どおりゴーストタウンと化していた。
閉じられたままのシャッターには、政府軍(AFP)と国家警察(PNP)が戦闘中、過激派が潜んでいないことを確認した“AFP/PNP Cleared”の文字が書かれている。片付ける間もなく避難したのか、道端の露店にバナナが数房、真っ黒に干からびてぶら下がっていた。政府軍による空爆や砲撃もあり、モスクや病院、多くの民家が破壊された。
政府軍スポークスマンは戦果を強調
唯一多くの人々が集まっているのは、政府の対策本部や政府軍現地本部などが置かれた丘の上の南ラナオ州庁舎。ここでインタビューした政府軍スポークスマン(陸軍大佐)は「首謀者のマウテ兄弟、アブ・サヤフ最高幹部のイスニロン・ハピロンの死亡を確認し、テロリストを完全制圧した。両派は合流してラマダン(イスラム断食月)初日の5月27日にマラウィを占拠する大規模なテロ計画を進めていたが、事前に情報をつかんで急襲し、計画を阻止することができた」と戦果を強調した。
また「死亡した1000人近いテロリストのうち、外国人はマレーシア人、インドネシア人を中心に約40人。その風貌からアラブ系と見られる者も数人含まれる」と述べるとともに、「中東からマレーシア人幹部を仲介して資金が流れ込んだことを、わが国のインテリジェンス(情報機関)が確認している。戦闘員が大挙送り込まれたわけではないが、ISISと関係があったことは間違いない」と話した。
気になる死者数を尋ねると、大佐は「戦闘終結時点で政府軍兵士・警察官165人、一般市民47人が犠牲になった。死体を確認したテロリストは962人だが、最終的には約1000人になるだろう」と説明し、「多くの市民が人質になったが、1780人を無事に救出した」と付け加えた。
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