電気自動車の使用済み電池は「宝の山」かも 中国リサイクル業者が熱視線

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EVの原動力となるリチウムバッテリーの生産も、中国で急増している。中国工業情報省のデータによれば、同国では2017年1─8月に前年同期比51%増となる67億個のバッテリーが生産された。

こうした活動によって、バッテリーやリサイクルといった関連事業を含め、中国がグローバルなEV産業の支配に向けて、有利な立場に立つ可能性がある。

2009年にEVを奨励し始めた中国では、当時の車に搭載されたバッテリーが寿命を迎えており、来年には17万トンものリチウムバッテリーが廃棄されると、業界の専門家は推測する。その数は、EV販売増に伴い、増え続ける可能性が高いとみられている。

だが、こうした廃棄物対処が中国にとって頭痛の種となっている。リチウムバッテリーはまだ有害廃棄物に分類されていないため、厳しい廃棄処理基準に対応していない。バッテリー廃棄物には、重金属のコバルトやニッケル、また、適切に処理されなければ水路や土壌を汚染しかねない有害な残留物が含まれている。

こうした課題が残る一方、バッテリー廃棄物は中国の成長著しいリサイクル産業にとって大きなチャンスでもある。

バッテリーリサイクル市場は2023年までに310億元(約5300億円)規模に成長する可能性があると、中国自動車業界のシンクタンクは予想している。

中国EVメーカー最大手であるBYDの王伝福社長は先月、使用済みバッテリーから再資源化されるリチウムや銅、コバルトは「財宝」だと表現した。

江西ガンフォンリチウムのような高性能リサイクル工場を持つ大企業はすでにその恩恵を受けていると、国金証券は投資家向けメモで指摘している。ガンフォンリチウムの株価は今年、200%超値上がりしている。

国金証券はまた、広東省深センに中国最大となるオートメーション化されたバッテリー処理施設を持ち、「都会の炭鉱会社」を自称するGEMにも言及。同社の株価は1月から60%超上昇している。

リサイクルの壁

とはいえ、バッテリーリサイクル業界は数多くの障害に直面している。

リチウムバッテリーのリサイクルは、多くの企業にとって非常に高くつく可能性がある。使用済みバッテリー処理の収益化や大量処理に必要な規格化に業界はまだ同意していない。

また、中国政府が補助金を出すなどして業界を十分に奨励しておらず、現在ある環境規制の強化も不十分だと、一部の業界幹部は指摘する。

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