中国発の「金融危機リスク」が消えない理由 米中貿易摩擦の深刻化は避けられない

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具体的にはハイテク産業です。現在、中国は半導体製造のための設備投資を、ものすごい勢いで行っています。将来的には、中国が世界に半導体を輸出する製造拠点になることを目指しているのでしょう。

でも、それを米国が黙って見ているでしょうか。間違いなく米中貿易摩擦に展開するはずです。ドナルド・トランプ大統領は、さまざまな通商問題を解決するに際して、多国間ではなく2国間で行おうとしています。これは、明らかに中国を意識した動きです。

「米中貿易摩擦」が深刻化、中国は敗北する

では、米国はどうやって中国との不公平な貿易関係を解決するのでしょうか。有効な手段としては、日米貿易摩擦のときに円高誘導をしたのと同じように、米国は中国に対しても、人民元高を要求するでしょう。もし人民元高が一段と進めば、米国の貿易赤字の半分を占める対中貿易赤字は減少するはずです。

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問題は、ここから先です。人民元高で中国の貿易黒字が縮小すればするほど、今度は人民元安へと転じます。人民元安が進むと、今度は中国国内から外貨が流出します。現在、中国は世界最大のドル債務国ですから、人民元安は人民元建ての債務を大きく膨らませるため、中国は莫大な借金を背負うことになります。日本のように、ドル債権国であれば通貨安はむしろメリットに働きますが、中国のようなドル債務国にとって通貨安は、通貨危機・金融危機に直結するおそれがあるのです。

こうして、米中貿易摩擦の行方は、米国による人民元高の要求から始まり、中国の貿易黒字減少、人民元安、中国からの資本流出、そして金融危機という流れのなかで、最終的には米国が勝利を収めるでしょう。それは、米国と強い同盟関係を維持している日本にとって、経済面においても強い追い風になるはずです。

鈴木 雅光 JOYnt 代表、金融ジャーナリスト

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すずき・まさみつ / Masamitsu Suzuki

1989年岡三証券入社後、公社債新聞社に転じ、投信業界を中心に取材。2004年独立。出版プロデュースやコンテンツ制作に関わる。著書に『投資信託の不都合な真実』、『「金利」がわかると経済の動きが読めてくる!』等。

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