稲盛和夫にハマる中国人が抱える「深い悩み」 拝金主義に不安を感じる人が「指針」を求め…
こう熱く語るのは同インナーメーカー「熳潔儿(マンジア)」の女性社長、張東吟氏。熱心に耳を傾ける塾生たちの机の上をのぞいてみると、稲盛氏の著書が何冊も置かれていた。
中でも最も有名な『活法』(邦題:『生き方』)は2005年に中国語版が出版され、海賊版なども含めると300万部を超すベストセラーになっている。どの塾生の本もこなれていて、熟読していることが一目でわかる。
取材した日は平日だったが、参加者は30~50代の広東省在住の中小企業の経営者や幹部たち。勉強会は前日から続いていて、この日も朝から夕方まで1日8時間、稲盛氏の本を読みながらディスカッションしたり、自社の経験談を発表したりする、というから驚いた。共通の目的があるからか、とにかく会議室全体に、ものすごいパワーやエネルギーがみなぎっている。
昼休み、張氏に話を聞いた。張氏は40代半ば。広東省出身で、女性用インナー市場の拡大を予測して1997年に広州で起業。2003年から加盟店を募って広東省内で事業を拡大していったが、次第に業績が伸び悩むようになった2011年ごろ、盛和塾の存在を知り、塾生になったという。
悩める経営者たちの心に刺さる
「がむしゃらに働いているのに、だんだん業績が上がらなくなった時期がありました。自分には何かが欠けているのか、会社をもう一段、成長させていくにはどうしたらいいんだろう、と悩んでいたときに盛和塾と出合い、『利他』の精神を学んで感動しました。私も含め、中国人にはまだあまりできていない考え方ですが、この考え方が広まり、他者に思いやりを持って接していけば、視野が広がり、経営の面でも突破口が見えてくるのではないか、と考えるようになりました」
稲盛氏の著作では、他人に尽くす「利他」の精神がふんだんに説明してある。また、大家族主義的な経営や、老子や孔子にも通じる中国的な道徳心を思い起こさせてくれる教訓もちりばめられている。
本家ともいえる中国では忘れ去られようとしていた「思いやり」や「道徳」は隣国の日本で大切にされ続け、日本人が実践し、経営にも生かしている。しかも、稲盛氏は日本の経済界をリードして、大成功を収めた人物だ。そして現に、日本は経済的に、これまでずっと中国の前を歩いてきた。その事実が今、右肩上がりの経済成長が終わりを迎えつつある中国で、悩める経営者たちの心に刺さっているのだ。
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