ユーロドル相場は一体これからどうなるのか みずほ銀行の唐鎌大輔氏に聞く

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次に、今年は上半期にFRB(米国連邦準備制度理事会)のみならずECBなども金融政策の出口を目指すという金融政策の正常化ブームが起きたということがある。それが思ったよりうまくいかないと分かってくるのが今年10月から1年間のユーロひいては為替相場のテーマになるだろう。結論から言えば、正常化に応じたユーロ買いはさほど続かないと考える。

ECBのタカ派姿勢は長くは続かない

――ECBの金融政策の正常化はどの程度まで進むのでしょうか。

唐鎌 大輔(からかま だいすけ)/みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 。2004年慶應義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向。2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。国際為替部で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。既刊『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社刊)

正常化を順調に進めていくことは難しいと見ている。マーケットが考えているほどECBのタカ派姿勢は強いものにはならないだろう。

現在、ECBは国債や資産担保証券(ABS)、カバードボンドなどを月600億ユーロ買っている。この緩和は年内続けることになっている。2018年1月以降は段階的に買い入れ額を縮小させ、2018年中には制度自体を廃止するというのが今夏の市場のコンセンサスだった。

だが今は制度自体の廃止まで見込む向きは大分減ったように感じる。技術的な制約が迫っているため、量的緩和を縮小するという方針自体は動かないだろうが、買い入れ額をワンショットで縮小して緩和期間を延長する程度の修正にとどめるとの見方は増えている。

これは、ECBが度重なるユーロ高けん制を行ったことで市場予想が軟化した結果だ。ECBは量的緩和を終わらせない限り、政策金利を引き上げることはないとコミットしているので、量的緩和の廃止延期は利上げタイミングの延期も意味する。こうした理解に基づけば、ECBのマイナス金利政策は2019年以降も続くと考えたほうがよさそうだ。

利上げできないとなれば、米独金利差も問題になる。ユーロドルの推移は基本的に米独長期金利差に連動しているからだ。しかし、7月を境としてユーロドルは米独金利差が横ばいにもかかわらず急騰した。こうした米独長期金利差とユーロドルの断絶(disconnect)はECB政策理事会の議事要旨(9月7日開催分)で「注目に値する動き(noteworthy development)」と指摘されていたものだ。その上で「7月の政策理事会までは長期金利差と整合的であったが、今やそのリンクは壊れている」と過剰なユーロ高に対して、はっきりと問題提起が行われている。

ECBの利上げが視野に入らず米独金利差が変わらないのであれば、先程述べたような断絶はユーロ安が進むことでしか解消されない。ユーロドルで1.15ドルとか1.15ドル割れくらいが視野に入らないと、米独金利差からみたユーロのオーバーシュートの調整は完了しないと考えている。

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