ヤマトが強気値上げ、ネット通販業者の苦悩 配送量も抑制、ドライバーの働き方改革急ぐ
西日本のあるEC事業者は今年8月、ヤマトとの契約を打ち切った。今年2月、同社から荷物量の抑制を求められ、宅配業者の2社活用を検討した。だが物流コストが増えるため、最終的に日本郵便への切り替えを決めた。「ヤマトの担当者は申し訳なさそうにしていた。本社が地方の営業所にも総量規制をそうとう急がせたようだ」と同社社長は話す。
ヤマトHDは9月28日、2019年度までの中期経営計画を発表。経営の最優先課題に掲げた「働き方改革」に1000億円を投じる。午後から夜間にかけての配達に特化したドライバー制度を新設。19年までに1万人規模の人員を雇用し、正社員やパート社員の残業の大幅な削減を目指す。
「社員の負担や将来性を考慮し、雇用を安定化させる策を打ち出したといえるが、実現のハードルは決して低くない」(SMBC日興証券の長谷川浩史アナリスト)。宅配業界は慢性的な人手不足のうえ、アマゾンが自社物流網の構築を探る動きもあるからだ。
ドライバー争奪戦が一層激化へ
アマゾンはヤマト以外にも物流の一括請負業者を活用。そのうちの1社、丸和運輸機関はアマゾン向けに東京23区を中心として早期の配送車1万台体制の確立を目指す方針だ。物流コンサルタントの⻆井亮一氏は「軽貨物宅配ドライバーの取り合いが加速するのは確実だ」と指摘する。
ヤマトHDの山内社長は、「今後も社会インフラであり続けたい」と語気を強める。宅配便シェアで半分を握るガリバー企業は、有言実行を貫けるか。
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