台湾新首相は低人気の蔡英文総統を救えるか 同性婚、脱原発、年金・・・立ち塞がる9つの難題
挑戦4 2025年までの原発廃止は可能か
グリーンエネルギーの発展を盛り込んだ改正「電業法」が成立し、民進党が核心的な価値とする2025年までの原子力発電所廃止は、その姿勢を簡単には変えることができない重要政策の1つだ。
今年8月15日に台湾全土で発生した大停電は、人為的な操作ミスを原因とする事故によって発生したものだった。だが、この停電から見ると、与党・民進党は反原発の代替策として掲げている、グリーンエネルギーと天然ガス燃料による火力発電の導入について、現在のスピードでは原発廃止で電力供給の減少分を補えないことがはっきりとしている。民進党の原発廃止政策は、厳しい試練に立たされている。今後、頼清徳氏がどのように台湾電力の体質を改善し、グリーンエネルギーの導入速度を加速させるか、民進党はその手腕を見極めようとしているところだ。
挑戦5 大型インフラ建設計画は実現可能か
前任の林全氏が任期内に推進した大型インフラ建設計画は、ようやく立法院で条例が可決・成立した。4年間に4200億台湾ドル(約1兆5000億円)を投じるこの計画は、軌道交通とグリーンエネルギー、水資源、デジタル、地位の5項目からなるものだ。またその第1期の特別予算も立法院の臨時会議で可決した。
将来、頼清徳氏がこれらの計画の執行において、どれほどの意志を見せ、能力を発揮できるか。しかも野党から、「選挙目当てだ」と疑われることがないようにできるかは、注視すべき課題である。
蔡英文総統の同意なく人事ができない
挑戦6 問われる戦闘力と派閥のバランス
林全氏の内閣は成立以来、身内である民進党内部から、国民党系官僚の人材が多すぎると批判を受けてきた。そのため、内閣全体に政策実行能力が足りず、士気は沈滞していた。文官から政務官に転じた人物が多すぎるため、交渉力や広報力が足りず、どのように政策を進めても庶民には実感として伝わってこなかった。今後、対外的な“戦闘力“の高い内閣を組織しなければ、政権の声望を高めることはできないだろう。
民進党は、頼清徳氏がいわば「戦闘内閣」を結成し、2018年の統一選挙に備え、さらに2020年の総統選挙・立法院選挙に向けて、党勢を上げてくれることを期待している。しかし、頼清徳は内閣人事について、蔡英文総統の同意を得なければならない。しかも、党内の派閥のバランスを考慮しなければならず、頼清徳氏の所属する新潮流派に人選を偏らせることはできない。しかも、頼清徳氏を助けてくれる使いやすいチームであるべきで、その人材起用の智恵が問われるところである。
挑戦7 経済振興が票を左右する
医師出身の頼清徳氏は、立法委員時代のほとんどを衛生・環境委員会で過ごし、財政・経済に関する法案にはあまり関与しなかった。しかし、台南市長に就任してからは、厳格な財源節約と開拓を同時に進め、台南市は昨年、この16年で初めて収支バランスの均衡を達成した。
頼清徳氏は財政に対して独特の節約スタイルを身につけている。が、財政・経済の閣僚をどのように任用し、そして台湾の経済をどのようにして振興させるのかは要注意だ。2018年下半期に予定されている統一地方選挙では、経済が低迷を続け人々の生活が好転せず、庶民に景気回復の実感を与えられなければ、有権者は投票で不満を示すことになる。そうなれば、支持率の低い多くの自治体の長は、中央政府の政治の影響を受けて、苦しい立場に立たされる。経済振興は、間違いなく最大の試練なのだ。