経済全体が映画のようにバーチャル化しつつある−−押井守 アニメーション・実写映画監督
--10年後、押井監督は……。
映画を作り続けますよ。今言った作り手の問題とかアニメーション自体が変わらざるをえないので、代わりの方法はいろいろと考えています。CGの役割とかね。もう新たな“発明”をするしかない。でもこの“発明”は監督にしかできないことなんです。
--押井監督の目には今の経済はどう映りますか。最先端の金融技術から生まれたサブプライム商品が世界経済の危機をもたらした。押井監督の世界観に似ていませんか。
僕はその経済というものが苦手で、いまだにわからない。経済とは実体のあるものを作って、それを売り買いすることでしょ。僕らは映画という実体のないものを作っているので、実体のある実業の世界は別にあると思っていた。なのにコンテンツという実体のないものにおカネを注いで基幹産業にするとはどういうことだろう。実体のないものに国の運命を託していいのかな。
おカネを回すことで経済が成立しているから、先進国といわれている国ほどおカネを回すということを最優先する。でもそれが日常の生活にどのくらい役立っているかというと、結構怪しい気がする。
年金だって国が本当に払ってくれる保証はない。社会全体に根拠が希薄になっている。僕らは「日本は安泰」だと言われる中で育ってきて、不景気になっても心配ないという根拠のない自信に満ちあふれているんだけど、本当にそうなんだろうかと。経済全体が、どこかしら映画と同じようなバーチャルな行為になりかけているという気がします。
--次回作はぜひ経済をテーマに。
実はそういう希望もあるんですよ(笑)。ポリティカルフィクションとか好きですから。なかなか企画が通らないけど、極端な話だったら、たとえばSF的なものにすればやれるかな。
(大坂直樹 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)
おしい・まもる
1951年生まれ。東京学芸大学教育学部卒。77年タツノコプロダクションに入社、83年『うる星やつら オンリー・ユー』で劇場映画初監督。2004年『イノセンス』はカンヌ映画祭に正式出品。最新作は『スカイ・クロラ』。著書に『他力本願』『凡人として生きるということ』(いずれも幻冬舎)など。
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