東芝、メモリ売却契約も「不安だらけ」の船出 「関係者の合意得られず」会見は中止に
中止の理由は、コンソーシアム関係者からの合意が得られなかったからだという。
契約では、公の場で説明する場合、全関係者の合意が必要となっていたが、社会的な関心も高い案件のため、会見は当然と考えていたベインは事前にすり合わせをしていなかった。具体的にどこの社が反対したかは明らかにされなかったが、1社ではないという。
契約上、個別インタビューは可能ということなので、情報を出すこと自体が問題ではないが、多国籍な関係者間で認識を一致させることができなかった。
「契約締結というリリース自体がフェイクではないのか」「呼びつけておいて馬鹿にしているのか」。記者からはこんな非難の声さえ上がった。結局、具体的な説明はなされなかった。
サムスンと対峙できるのか
記者会見のドタキャンは異例ではあるが、怒ってみても仕方がない。むしろ、心に広がったのは、TMCの先行きに対する不安感だ。
半導体メモリ事業は、数千億円単位の設備投資を毎年続けていく必要があるうえ、一旦、市況が悪化すれば巨額の損失を生むリスクが高いビジネス。市況の谷底で果敢な投資をできた企業が勝ち残る。TMCは、世界最大の半導体メーカーとなった韓国のサムスン電子を相手に戦っていかなくてはならない。
記者会見の開催一つとっても、関係者間で簡単に意見がまとまらない。そんな状況で、この先キャッシュフローを越えて投資が必要になった場合、機動的な意思決定ができるのか。
そもそもここまでの道のりも紆余曲折があった。
東芝がメモリ事業の売却を打ち出したのは今年1月末。米国の原子力事業子会社ウエスチングハウス(WH)で巨額損失が発生することは判明し、その穴埋めに迫られたからだ。当初、株式の20%程度を売却するとしていたが、損失が膨らむにつれ全株売却へと方針は変わっていった。
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