33歳コワモテ力士の目を覚まさせた妻の叱咤 相撲界の壊し屋・松鳳山が直面した引退危機
こうしてその年の3月に2人は晴れて結婚。松鳳山29歳、あいさん27歳。ほどなくして長男・志希也(ゆきや)くんも誕生。あいさんは幸せの絶頂にいた。その一方で守るべき家族ができた夫は…
「結婚して成績が悪かったりすると、奥さんのせいだとかなるじゃないですか? もっとしっかりやらないといけないって思っていました」(松鳳山)
その懸念が現実のものとなってしまう。三役となって初めて迎えた初場所で4勝11敗と大きく負け越した松鳳山は、わずか1場所で小結から転落。さらに2014年7月場所から極度のスランプに陥り、ケガをしたわけでもないのに負け越し続き。翌年の3月場所に至っては何と13連敗を喫し15日間で、わずか1勝しかできなかった。
三役へと駆け上がりながら十両まで転落
一時は三役へと駆け上がった松鳳山だったが、21場所続けた幕内から十両にまで転落した。
「その時はやっぱり変なプライドを持って相撲をとっていた。元三役だ、元幕内だって、普通にやったら戻れるだろう、みたいな」(松鳳山)
スランプの原因を、そう分析する夫だが、妻・あいさんにしてみれば結婚とともにケガもしていない夫の成績が急降下したことで、周囲からの視線も気になり始め、「不調の責任は自分にあるのでは…」と精神的に追い込まれていった。
「『私のせいかな』『昨日あんなこと言ってしまったからかな』って自分を責めてしまったり」(あいさん)
十両に転落してからも7勝8敗、6勝9敗と負け越しを重ね、復活の兆しは見られず。そして、ついに気力をすっかり失った夫・松鳳山の口からある言葉が飛び出す。
「あーあ…もうやってらんねーよ。俺、相撲やめようかな…」(松鳳山)
夫の口から出た「引退」の2文字。すると、妻は…
「…ふ~ん、だったら辞めちゃえば?そんな弱気だったら勝てるわけないよ。辞めちゃえば?」(あいさん)
励ましもせず、突き放した。
「もう、何か、なげやりに言っていたのでこれは本心じゃないなって感じたので…(彼は)辞めきらないなって思ったんです、その時。なので『勝手にやめたらいいやん』みたいな。この先ダメになっちゃうかもって覚悟で言いました」(あいさん)
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