独自の政局観で動き出した公明党

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独自の政局観で動き出した公明党

塩田潮

 参議院の民主党から離党者が出た。自民党による野党介入の始まりと見る人もいるが、顔ぶれも人数も予想の範囲内で、むしろここまで何度も分断工作を試みたのに、これ以上は無理という実態が明らかになったという指摘もある。それ以上に、要注目は公明党だ。かつては与党内で「踏まれても蹴られても付いていく下駄の雪」と皮肉られたこともあったが、最近は「自己主張」が目立つ。福田首相による解散への疑問提示、大型補正予算や定額減税の実施要求、インド洋での給油継続問題での慎重姿勢、臨時国会の会期問題等々、福田政権にことごとく楯突いている印象で、自公連立見直しもといわれるような情勢である。

 矢野元公明党委員長の参考人招致問題などで揺さぶりをかける民主党側の与党分断工作が奏効している面もあるが、根本原因は公明党が自民党を助ける意義が薄れた点にある。もともと1999年10月の連立参加は、98年の参院選で過半数割れした自民党を助けて貸しをつくるのが目的だった。ところが、昨年の参院選の結果、自公両党でも過半数に届かず、「参議院カード」を失った。いまは衆議院で与党が三分の二条項を使うとき、公明党がノーなら不成立という「三分の二カード」しかない。だが、解散の時期などで、福田政権が公明党無視で走れば、自公体制はデメリットのほうが大きいということになる。

 「下駄の雪」から脱した公明党は現在、独自の政局観で動き出した。政党としては当然の舵取りだが、自ら政局を動かしたり、政局にする場合、広範な国民の支持を背負っていなければ、ただの権力闘争に堕してしまう。将来、与野党のいずれの側に立つにしても、支持団体の創価学会の利害を超えた判断ができないまま政局に手を染めれば、「漂流政党」という運命が待ち受けているだろう。
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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