任天堂とミクシィ、「稼ぎ方」の決定的な差 大ヒット「スイッチ」の収益貢献度は?

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一方の任天堂は、ハードとゲームソフト(ソフト)の両方を販売。一般的に、ハード販売の際、可能なかぎり安価で売ってユーザー数を増やし、ソフトの売り上げ増につなげようとする。

スイッチの場合も同様で、そのぶんハードの製造原価がかさみ、利益を下押ししてしまう。右表のように、任天堂の売上原価率は5割超と、1割超のミクシィと大きく差がつく理由はここにある。

手取りはソフト1本で「1300円程度」

ただ、スイッチの収益効果は実はここから。ゲーム業界では、ハードの普及にさえ成功すれば、利益率が急改善に向かう傾向がある。それはハードに比べ、収益性の高いソフトの販売が本格化することに加え、他のソフトメーカーが積極的に、自社のハードからソフトを出すようになるからだ。

悲観的な下馬評を覆し、世界的ヒットとなった「ニンテンドースイッチ」(撮影:田所 千代美)

任天堂の場合、他社のスイッチのソフトの売り上げが、どのように収益還元されるのか。まず他社のソフトメーカーは、任天堂にカートリッジの生産を委託し、任天堂はそれにロイヤリティなどを上乗せした価格で、ソフトメーカーに販売する。

その金額は、ハードの種類や販売本数、ソフト価格によって左右され、任天堂は決算で開示を行っていない。あるソフトメーカーの幹部は「一般的に小売価格6800円のソフト1本につき、1300円程度がハードメーカーの手取りになる」と話す。これが任天堂にとっては収益源となる。

実際、大ヒットハードの「Wii」と「ニンテンドーDS」の普及が進んだ2008年度、任天堂は売上高1兆8386億円に対し、営業利益5552億円と、30%を超える営業利益率を実現していた。スイッチがこのままの勢いで売れ続ければ、ハードに加え、ソフトの収益が乗っかり、任天堂にとっては「金の卵」となる。

任天堂とミクシィの決算書には、このようにビジネスモデルによる収益還元のタイミングの差も、如実に表われる。任天堂にとっては2018年度以降が、本格的なスイッチ投資の“収穫期”となりそうだ。 

『週刊東洋経済』9月4日発売号(9月9日号)の特集は「本物の会計力」です。
渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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