伊藤忠が「がん治療支援」に本気を出した理由 岡藤社長を動かした社員からのメール
万が一、不幸にも社員が亡くなったときのアフターフォローもある。これはがんに限ったことではないが、在職中の社員が病気で亡くなった場合の無償の子女育成資金を、今回の取り組みに合わせて拡充する。
具体的には、子女が24歳になるまで学資を援助する。現役合格なら大学院修士課程修了までをカバーできる。従来は公立学校への通学を想定していたが、今後は私立学校への通学もカバーできる水準に支給額を上げる。
高校生対象ではおおよそ従来の2.6倍、大学生対象では1.6倍に引き上げられる。また、仕事に就いていない配偶者が希望した場合や、子女が後に働きたいという意思を示した場合は、伊藤忠グループ内の職場を斡旋する。
「がんに負けるな」という一通のメール
こうした取り組みの背景には、1つのエピソードがある。
今年2月、がんで闘病中の社員が岡藤正広社長にメールを送った。これまでの支援に対する謝意を示したものだったが、その中にこう記していた。「私の中では、伊藤忠が一番いい会社です」。
その社員は翌月に亡くなったが、それを受け岡藤社長は全社員にメールを送った。「私は当社で頑張る社員が、仮に病気になっても、それを物心共に皆で支えていくことができる、そんな伊藤忠にしたいと決意を新たにしました……(以下略)」
そして岡藤社長は7月21日、全社員向けに「がんに負けるな」という標題のメールを送った。今回の取り組み内容をほぼ予告するものだが、そこには岡藤社長の以下のようなメッセージがあった。
「人は自分の居場所はここだと思った時に、大きな力を発揮するものです。その力は業務遂行のみならず、闘病においても有効です。皆さんの居場所は、伊藤忠の現在のその席であって、皆さんは、かけがえのない伊藤忠の家族であることを常に忘れないでいただきたいと思います。当社は再チャレンジの利く会社です。そしてそれが伊藤忠の持つ大きな強みの一つでもあります」
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