中国、企業収益改善で債務問題対応余地拡大 上海上場企業の1Q純利益は前期比で70%増

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 9月22日、中国では企業収益が上向いているため、当局が膨らみ続ける債務問題について経済に大きな打撃を与えずにさらなる対応を進められる余地が出てきた。写真は北京で2016年3月撮影(2017年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[香港/ベンガルール 22日 ロイター] - 中国では企業収益が上向いているため、当局が膨らみ続ける債務問題について経済に大きな打撃を与えずにさらなる対応を進められる余地が出てきた。

トムソン・ロイターのデータによると、上海上場の非金融企業約1000社の第1・四半期の純利益は前年同期比でほぼ70%増。第2・四半期業績もこれまでのところ、好調な勢いを維持している。

今年全体で見ても、アナリストが予想する104社の増益率は38.25%で、昨年の10.6%よりはるかに高い。

世界金融危機以降に中国の債務は大きく増加し、国際通貨基金(IMF)や国際決済銀行(BIS)などから相次いで危険な状況を招きかねないと警告される事態となった。このため政府は今年、債務削減を優先的な政策課題の1つに掲げている。

そして足元までに、債務問題が経済や金融に危機を起こすのではないかという懸念を和らげるいくつかの対策が軌道に乗りつつある。

6月には平均貸出金利が2015年9月以来の高水準となったことが、人民銀行(中央銀行)の四半期報告で判明。7月の社会融資総量は1兆2200億元と、6月の1兆7800億元から減少した。もっとも前年比では13.2%増えており、当局がブレーキを急に踏み過ぎないよう配慮している様子がうかがえる。

政府は企業倒産をより許容する姿勢になったようにも見える。フィッチが最高人民法院(最高裁)の記録を分析したところでは、今年1─7月の破産件数は4700件で、昨年全体は5665件、15年は3684件だった。

とはいえアナリストの話では、やはりこの分野でも経済を不安定化させないように動きはゆっくりだ。また破産企業のうち多くの債務を抱える国有セクターは12%にすぎない。破産件数自体も昨年のフランスの10分の1、米国の4分の1にとどまる。

INGの広域中華圏エコノミスト、アイリス・パン氏は「デレバレッジング(債務圧縮)の過程は非常に長い。短期間で処理される事態は誰も望んでいない。なぜならそれは銀行セクターにとってだけでなく、経済全体にとって犠牲が極めて大きいからだ」と指摘した。

こうした中で政府が金融環境をさらに引き締めようとするかどうかはっきりしないが、一部のエコノミストは、秋の共産党大会で習近平国家主席が権力基盤を固め終えた後は、政策が引き締め方向になると予想する。

フィッチの中国担当メーン・ソブリン・アナリスト、アンドルー・フェネル氏は「(金融引き締めを)試す余地が増す。経済成長の強い前向きの力を背景にそうしたことを遂行するのは時宜にかなっている」と述べた。

オックスフォード・エコノミクスのアジア経済責任者ルイス・クイス氏も、中国は2021年までにゼロになるように与信の伸びを抑えながら、年間成長率の下押し幅を1%ポイントに限定することができると主張。こうした取り組みが実現すれば「彼らは長期的なプラスに働くような成果を上げつつ、他国よりもかなり高い成長を維持するだろう」と語り、真剣に検討するよう促した。

(Marius Zaharia、Tripti Kalro記者)

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