期せぬ死後のスマホ、考えたことありますか ネット上の情報を放置していたらリスクも

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故人のページが何年もインターネットを漂っていて、IDやパスワードを知らない家族が一読者として読みにいくという牧歌的な光景は維持できなくなるかもしれません。持ち主としても、「大昔に書いたブログだからいいや」と放置していたものが、自分が死んだ後に家族の住所を特定する材料として悪用されるリスクを無視するわけにはいかなくなるでしょう。

オンライン資産の処遇はサービス提供元の利用規約によって大きく変わります。インターネットサービス全体の常識に動きが出たら、規約に影響が出ることは必至です。すると、現在のオンライン資産の対策は通用しなくなるおそれがあります。いずれにしろ、オンラインの資産や対応策はダイナミックに変わっていくととらえておいたほうがよさそうです。

いまでは安価なスマートフォンでもストレージを暗号化するのが当たり前になっていて、個人が使うパソコンでも暗号化設定が選べるものが増えています。特に屋外に持ち出すタイプの端末は、盗難にあっても簡単には中身に触れられないような設定が出荷時からなされるようになる見込みが高くなりそうです。

生体認証が増えると

虹彩認証登録する際は、併用するロック解除方法を設定する必要がある。こうしたサブキーの設定は、生体認証がうまく通らないときのための救済手段として常識となっている

ただ、いくら厳重といっても持ち主が解錠に手間取るようなら道具としての利便性が損なわれてしまいます。そこで注目されているのが生体認証です。指紋認証はすでに多くの端末で使われていますし、虹彩認証(瞳の紋様で個人を特定する)を採用したスマートフォンも流通しています。最近では、音声での認証や心臓の鼓動による認証技術も製品化されていて、今後もバリエーションは増えていきそうです。

IT業界でも、グーグルやマイクロソフト、NTTドコモ、レノボ、サムスンなどが加盟している生体認証技術の標準化団体「FIDO Alliance(Fast IDentity Online Alliance)」が導入を後押ししているので、近い将来、生体認証キーが常識になるかもしれません。

それでもパスワードやパスコードなどのキーもサブとして存続すると思いますが、サブはサブゆえにあまり表に出てこないところがあります。生体認証中心で使っていたら、持ち主でさえ忘れることもありそうです。

『ここが知りたい!デジタル遺品・資産を開く! 託す! 隠す!』(技術評論社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

しかし、生体認証キーは基本的に本人から持ち出せませんから、万が一の際に家族が頼れるのはそのサブキーのみとなります。

持ち主にとっては手軽にアクセスできて高いセキュリティの壁に守られるというメリットばかりの環境になっていきそうですが、万が一の際の家族の立場では問題解決の難易度がじわじわ上がっているようにも見えます。

そうなると、遺族向けの救済措置も強化するメーカーやサービス提供者もおそらくは増えていくと思いますが、業界で標準化するかはまだ未知数です。

古田 雄介 フリーランスライター

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ふるた ゆうすけ / Yusuke Furuta

1977年生まれ。名古屋工業大学卒業後、建設会社と葬儀会社を経て2002年から雑誌記者に転職。2010年からデジタル遺品や故人のサイトの追跡している。著書に『第2版 デジタル遺品の探しかた・しまいかた、残しかた+隠しかた』(伊勢田篤史との共著/日本加除出版)、『ネットで故人の声を聴け』(光文社新書)、『故人サイト』(社会評論社)など。

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