トヨタの10代目「カムリ」乗ってわかった実力 基本から大刷新、不遇のセダン市場へ挑む

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そうしたアメリカにおける「カムリ」のポジションを知ったうえで、10代目「カムリ」を眺めると、このクルマに秘められたトヨタの思いが伝わってくる。正直なところ、ドイツプレミアムのセダンのような迫力は感じないが、ノーズが低められていて、スラントしたルーフへと連なるボディラインは、遠近感のある景色の中で眺めてみると、なかなかカッコいい。

顔立ちは、近年のトヨタ車に共通するもので、デイライトとクリアランスランプを組み合わせた3連のLEDヘッドランプにLEDターンシグナルを添えて、ワイドな印象を強めるフロントグリルのデザインとあわせて、先代よりぐっと個性的な顔立ち、つまり”キーンルック”になっている。リアに視線を移すと、ぐっと力強く、踏ん張り感のある印象だ。

新世代の設計思想である「TNGA」の意義

このスタイリングを実現した最大の秘訣は、すべてにおいてTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)という新世代プラットフォームを採用したことだ。最適なドライビングポジションや低重心による走行安定性も含めて刷新された。

TNGAは2015年末登場の現行4代目「プリウス」から採用された新しい設計思想であり、昨年末に登場した新型SUV「C-HR」に続いて、新型「カムリ」でも用いられた。プラットフォーム、パワートレイン、電装系、果ては純正オイルまでTNGAに基づいて新設計された。

全長4885×全幅1840×全高1455mmのスリーサイズは、先代より、35mm長く、15mm広く、25mm低い。フードの高さが40mmも低められており、ハイブリッド用の電池を後席の下に積むことにより、走りに寄与する重心もぐっと低められている。

運転席に座ってみると、さらにその効果がよくわかる。フロアが低められていることに加えて、フロントシートの位置を後ろに下げて、ヒップポイントを降ろしたことで、セダンらしいシートポジションになり、クルマの動きをつかみやすい。

従来のトヨタ車の難点として、“中立付近の味がない”のが味かと思うほどだったが、新型「カムリ」では、全域でインフォメーションが豊かで、自分でクルマをコントロールしている感覚を得られる。同時に、ボンネットを低めて、Aピラーを細く仕立てることで、前方の見晴らしのよさも損なっていない。

7インチTFT液晶を真ん中に据えたオプティトロンメーターが採用されている(写真:筆者撮影)

室内に目を向けると、カラーのヘッドアップディスプレーが搭載されていたり、7インチTFT液晶を真ん中に据えたオプティトロンメーターが採用されるなど、インターフェースもぐっとモダンになった。日本では主力となるであろう「Gレザーパッケージ」を備えた試乗車は、18インチホイールを装着していたこともあって、よりシャープなハンドリングだ。対して、17インチホイールを履く「G」のほうが、いくぶんマイルドな印象ではある。

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