「鉄道の混雑率」は、30年間でどう変わったか 数値では下がっているが、実感は?
山手線内回り(新大久保→新宿間)はデータが同年度だけ150%台と異常な数値のため除外したが、1985年度は263%、1987年度は258%を記録しており、本来なら5位内に入るであろう混雑ぶり。1位の常磐線快速の混雑率は1987年度に279%に達し、JR東日本は発足直後に編成両数を10両から15両に増強したほか、中央線快速の増発や山手線内回りの並行路線となる埼京線の恵比寿延伸(1996年)などを実施した。
その結果、1996年度のワースト5は顔ぶれが変化。1986年度の1位だった常磐線快速は9位(220%)へ下がり、1位が山手線外回り(244%)、2位が南武線と常磐線各駅停車(243%)、4位が京浜東北線(242%)、5位が埼京線(238%)となった。
さらに10年後の2006年度には、1位の混雑率がようやく210%台まで低下。ワースト1位は1996年度と変わらず山手線外回りだが、混雑率は216%まで緩和された。
これは車両が車体幅の広い新型車両に変わり、収容力が増えた点もあるが、ラッシュの最混雑時間帯の利用者数がやや減少したことも要因だ。2006年度の山手線外回り・上野→御徒町間の最混雑時1時間の通過人員は約8万4000人で、1996年度と比べて約6000人減少。「湘南新宿ライン」の運転開始などで利用者が分散したことがうかがえる。
2位以下は順に中央線快速(208%)、総武線各駅停車(206%)、武蔵野線(202%)、埼京線(200%)。混雑率200%は「体が触れ合い相当圧迫感があるが、週刊誌程度なら何とか読める」状態のため、楽な状態とはまったくいえないが、1980年代と比べればだいぶ緩和されたことになる。
「手詰まり感」ある路線が上位に
2006年度までの集計結果で気づくのは、ワースト5入りしているのがすべてJRの路線ということだ。近年、特に混雑する路線として知られる地下鉄東西線や小田急線といった路線は、この時点ではまだ上位5位内には入っていなかった。
だが、これらの路線の混雑率が今より低かったわけではない。東西線の混雑率は1996年度が200%、2006年度が199%で2016年度と変わっておらず、小田急線も1996年度が193%、2006年度が190%と、現在とほぼ同様だ。これらの路線が近年混雑路線の上位に入ってきたのは、かつて上位だった他の路線で一定の混雑緩和が進んだのに対し、ほぼ変化がなく「高止まり」していたためだ。
この30年間、ワースト10にランクインし続けている総武線各駅停車も同様だ。1996年度に233%だった同線の混雑率は、2006年度には206%まで27ポイント下がったが、2016年度までの10年間では8ポイントの低下にとどまっている。混雑率が多少低下してきたのはラッシュ時の輸送人員がやや減ったためで、同線の最混雑時1時間当たりの輸送力は3万8480人分(10両編成×26本)で2000年度から変わっていない。
2016年度の混雑率データで新たにワースト5入りした新交通システム、日暮里・舎人ライナーも2008年の開業以来増発を続けているものの、運営する東京都交通局は「これ以上の増発は今のところ難しい」という。車両編成が6両の南武線も、現時点での車両増結には課題が多い。
この30年で一定の混雑緩和が進んだ中、最新のデータでは混雑対策に「手詰まり」感のある路線が上位に残ったといえる。来春に複々線化が完成する小田急線のような路線もあるものの、ハード面での対策による混雑緩和には一定の限界が見えてきていることを示しているのではないだろうか。
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