3メガバンクがくみ取る金融庁の厳しい意向 顧客本位が口だけの金融機関は淘汰される
その取り組みは、メガバンクグループで本格化している。最初に動いたのが、グループ内の資産運用会社の再編だ。従来は、系列内の資産運用会社は顧客の利益のためではなく、販社の銀行や証券会社が高い手数料を得やすい投信を優先的に作ってきたのではないかと指摘されている。このため、グループ内再編により、資産運用会社の独立性を高め、系列内の銀行や証券会社が口を出せないような体制にする必要があった。
みずほフィナンシャルグループ(FG)は昨年10月、みずほ信託銀行の資産運用部門を切り出し、系列の資産運用会社と統合して、アセットマネジメントOneを発足、それを持ち株会社の下にぶら下げた。三井住友FGも同じ時期に資産運用会社を三井住友銀行傘下から持ち株会社傘下へ移行した。持ち株会社直轄とすることで、経営の指揮系統に銀行や証券会社が介在することを回避したわけだ。
独自の道を行くのが三菱UFJフィナンシャルグループだ。三菱UFJ信託銀行を資産運用部門の中核企業と位置づけ、その下に一般顧客向けの公募投信を組成する三菱UFJ国際投信をぶら下げることを計画。三菱UFJ信託銀行は商業銀行よりは小規模ながら店舗を通じて投信のリテール販売を行っているため、販社との遮断という目標には一歩及ばない感もあるが、ほか2メガグループと同様、外部有識者によるFD委員会を立ち上げ、顧客との利益相反がないかのチェック機能を持たせている。
メガバンクの実践を金融庁が注視
3メガバンクグループもFD方針を発表済みだが、その記述は同じテーマでも微妙に異なる。「商品の特性・リスク等を踏まえ、お客さまにとってふさわしいとはいえない可能性があると判断した場合には、必要に応じてお客さまとご相談し、ご提案を控えさせていただくこともございます」(三井住友FG)、「特に高齢のお客さまや投資の知識・経験が十分では無いお客さまへはリスクを抑えた商品をご提案する等、お客さまのライフステージや属性を踏まえ、ニーズに沿った商品をご提案してまいります」(三菱東京UFJ銀行)といった具合だ。
先の金融庁幹部は「中には、そうとう銀行内で議論したと思われる記述もあり、一定の評価ができるものもある。ただ、外形的にこうでなければならないということはない。各金融機関の取り組みをしっかりモニタリングしていく」と話す。
メガバンクグループの取り組みは緒に就いたばかりだ。金融庁は、インデックス投信を中心とした資産形成の動きが日本でも定着することがFDのひとつのゴールと見定めている。
しかし、従来の投信購入は、退職金を元手としたシニア世代による100万円単位の購入だったのに対し、資産形成を目的とした投信購入は、現役世代による毎月3万円程度の積み立てとなる。採算性が悪く、収益化には5~10年程度はかかるとみられ、メガバンクグループをはじめとした金融機関がビジネス的に成功するかは不明だ。積み立てNISAなど、資産形成のための非課税優遇制度の拡充も進んでおり、今後数年が勝負となる。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら