フリーゲージで「信号トラブル」も起きていた 新幹線だけでなく在来線にも問題があった
鉄道・運輸機構が次に着目したのはレールの上のさびと汚れだった。レールをよく見ると、頻繁に列車が走ることで車輪によってピカピカに磨かれている部分と、あまり車輪に接することがなくさびの浮かんでいる部分があることがわかる。汚れた水が蒸発した跡には汚れも生じる。これらは電気を伝えにくい。一般的な列車なら問題なくても、もともと電気が伝わりにくいFGTがさびや汚れの上を走ると電気が伝わらないリスクは格段に高まる。
構造上の問題はほかにもあった。FGTは新幹線と在来線の両方を走るため、在来線のレールの上だけを走る一般の列車とは車輪の踏面(レールと接触する部分)形状が異なる。
そのため車輪とレールの接触箇所が一般の列車とは微妙に変化し、FGTはさびや汚れの上を走ってしまうリスクが一般の列車よりも高いのだ。
「信号トラブルは、FGTが走る前にレールをきれいに磨いたらぴたりと消えた。3次車の試験でもまったく起きていない」と、鉄道・運輸機構の担当者が語る。とはいえ、磨いたレールはいつかは汚れるしさびる。FGTが走る前には必ずレールを磨いておく必要があるのか。国交省からは、「FGTが営業運転される際は1日に何本も走るのでレールをいちいち磨く必要はない」というコメントがあった。
ただ、踏切の遮断機が下りないというトラブルは何万回に1回という低確率であっても起きてはならないことだ。3次車は新幹線区間を合わせても3万kmしか走っていないので、本当に再発しないのどうかを判断するには不十分に思える。もちろん、軌道回路に頼らない別の信号システムも実用化されている。そうした技術を採用すればリスクは消える。だが、導入には多額のコストがかかる。
JR九州はこの件に関して口を閉ざす。とはいえ「フリーゲージトレイン技術研究組合」の一員として2次車の開発にかかわってきただけに何が起きていたかは当然承知していたはずだ。JRが九州がFGTを見限った決定の裏には、車軸の摩耗対策や修理コストのほかに、これまでの開発にかかわるさまざまな理由があったのかもしれない。
他路線への導入に計画変更か?
FGT開発に対して、国は500億円もの費用を投じている。おいそれと開発を断念するわけにはいかないだろう。軌間幅の異なる東急線と京急線を結ぶ「蒲蒲線」など、FGTを待望する計画は全国にいくつもある。他路線への導入といった計画変更もありえる。
ただ、在来線での信号トラブルも高速走行時の車軸の磨耗も、技術者にとっては想定外の事態だった。他路線に転用するにしても徹底的な検証は欠かせない。どんなトラブルが飛び出すかわからないからだ。「完成まであと一歩」(国交省)というFGTだが、その一歩があまりにも遠い。
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