バス会社を次々買収、「みちのり」とは何者か

買収戦略から将来構想まで経営トップが激白

みちのりHDは発足後すぐに、経営破綻して再建中の福島交通と茨城交通を子会社化。さらに2010年には同様に再建途上にあった岩手県北自動車を買収し、会社発足からわずか1年で東北・北関東のバス会社3社を傘下に収めた。

その後も2012年に関東自動車、2013年に会津乗合自動車(福島県)、2015年に湘南モノレール、2016年に東野交通(栃木県)を買収して、現在に至っている。なお、2017年3月には南部バス(青森県)も岩手県北自動車に事業譲渡する形でグループ入りしている。

当初は経営が悪化した企業を中心に買収を重ねてきたが、近年は様相が違う。業績は堅調だが親会社の経営構想から外れた企業を買収するケースが増えている。湘南モノレール、東野交通などがそれだ。

傘下企業の経営陣には松本氏が会長または社長として名を連ねるほか、産業再生機構出身者や銀行などからヘッドハンティングした人材が経営幹部に就く。「当社のメンバーは6~7人くらいしかいない」と、みちのりHDの工代将章ディレクターは語る。管理職や現場社員を非買収会社に送り込むほどの余裕はないようだ。

代わりにみちのりHDが行っている経営手法は「縦串と横串」というものだ。まず縦串は松本氏ら経営陣が各社のプロパー社員と緊密にコミュニケーションをとりながら経営改善を図っていく。一方で、横串はみちのりHDの6~7人のメンバーがフル回転して、傘下会社を訪問して経営指導や情報収集に当たっていく。

各社の最適事例は、他社にも横展開される。「バスの部品交換のタイミングを年数で決めるのか、距離で決めるか、これを各社で統一するだけでもコスト低減効果は大きい」(工代氏)。岩手の貨客混載バスを茨城で実施した例も横展開の好例だ。

宇都宮LRTの第3位株主に

バスの車体をキャンパスに見立てた「会津お絵かきバス」(写真:みちのりホールディングス)

みちのりHDはバス業界だけでなく、鉄道事業でも勢力を拡大中だ。傘下企業に湘南モノレールを抱えるほか、福島交通は飯坂電車を運営している。第三セクター鉄道のひたちなか海浜鉄道はひたちなか市と茨城交通の共同出資により設立された。

宇都宮市内と郊外の工業団地を結ぶ約15kmをゼロから新線として建設するLRT(軽量軌道交通)計画でもみちのりHDは存在感を発揮している。関東自動車と東野交通がLRTの営業主体となる「宇都宮ライトレール」にも出資しており、両方合わせた出資比率は11%になるからだ。この数字は筆頭株主である宇都宮市や地元持株会に次ぐ第3位に相当する。

宇都宮市内ではLRTと路線バスをどう共存させるかが課題となっている。宇都宮で得た経験は今後他都市で同様の試みが行われる際の貴重なノウハウになるかもしれない。

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