通勤電車の一等地「ドア横」巡る仁義なき戦い 立っている人の体が座っている人の顔を圧迫
気を使え、譲り合えと言ったところで何の解決にもならない。ドア横に網棚までの高さがあり、深く座席に座った人のひざが隠れる程度の幅のボードがあったら、トラブルは激減すると思うのだが、導入される気配はない。
首都圏の鉄道会社(JR東日本、東京メトロ他私鉄7社)にその理由を聞いてみたところ、全社から同じ回答が戻ってきた。いわく、座っている人に圧迫感を与えない高さであること、車内に死角をつくらないこと、車内流動性が確保できること、そして何よりも終着時の乗客の降車確認のための視認性が確保できること。以上を勘案すると、網棚までの高さがあり、座っている乗客のひざが隠れる幅はこれらの条件を満たさない、というのだ。
がっかりしていた矢先、意外なところで理想型の車両を発見した。JR北海道が札幌と新千歳空港とを結ぶ快特エアポートに使用している733系である。
ボードの高さは首都圏を走る車両とほぼ同じだが、その上に天井まで強化ガラスがはめ込まれている。ボードの幅はひざは隠れないが、それでも座席の奥行きよりは若干深い。ガラスと手すりとの間隔も5cm前後しかない。これなら立っている人の荷物がガラスと手すりとの間から越境してくる可能性は極めて低い。
ドア横バトルを防止する意外な理由
JR北海道によれば、「デッキがないロングシート車両を採用するにあたり、北海道特有の厳冬期の寒さ対策として、風の入り込みを可能なかぎり防ぐため」に考案された設計なのだそうだ。
通常の車両に比べ、製造コストがどのくらい上がるのかについては、「ロングシート採用以前はデッキ型しか製造していないのでわからない」という。
そこで、製造元の川崎重工業にも問い合わせたが、「ガラスの調達額は発注数量によっても異なり、取り付け作業にかかるコストも設計によってさまざま。ガラス部分だけでいくら、という算出は不可能」という。
でもこの設計なら、死角はできないし、終点時の乗客の乗降確認にも支障はないはずだ。強化ガラスの高さは首都圏なら天井までは不要で、網棚の高さまででいい。列車内の平和のため、鉄道各社には、この設計の採用を願ってやまない。
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