買春エリート夫の「家庭のため」という言い分 「不倫はしない、妻は大事」なのになぜ?

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「3年ぐらい前からかな」と彼は切り出した。「うまくいかなくなってね」

いやまだなにも聞いてませんって! だいたい、こんにちはなんてあいさつもまだだし。

ちょっと待ってと言って、ぼくはいつもの情報開示の手順に取りかかった。ぼくはコロンビア大学の研究者です、実は今は買春客の正式な研究を行っているわけではありません、あなたの本当の名前は出しません、それから……。

「そういうことは心配してない」。マーティンが割って入る。「キャシーを完全に信用してる」

「マーティン、ぼくには義務があって、あなたに間違いなくわかって……」

「ぼくと同じ状況の男が、知っている中に何人いるか言ったっけ?」。構わず彼は続けた。

「20人は下らない! 職場のちょっとした醜い秘密みたいなもんだ。でもぼくらはダメリーマンじゃないんだ、ちゃんとした人間なんだよ。わかるか、いろんな理由で奥さんに不満があって、みんなそれぞれ短所や衝動を抱えている、そういう人たちなんだ。でも家族は大事に思っている」。ここで彼はキーワードを繰り返した。「ちゃんとした人間なんだよ」

でも衝動に動かされたり内緒でやってることがあったりって、なんかもっと根深い問題があるんじゃないですか? セックス中毒とか。

彼の顔が、なにを下らんことを、という表情になった。

「そういうのはマスコミで見たよ。意味ないな。結局、ウチの奥さんはぼくの話を聞かんってことだ。キャシーは聞いてくれる」

買春婦と会ってもセックスするのは半分

信じてもらえないのをわかってたのか、それともぼくの顔がそう言っていたのかのどっちかなんだろう。ぼくが口を開くよりも早く、彼は反論を始めた。

「キャシーと会ってもだいたいはセックス自体しないんだ! なんなら数えたっていい。君は数字が好きだってキャシーが言ってたからね。先週は2回会った。セックスはなし。その前の週は1回はヤったけどもう1回はなし。その前はっていうと、6月は……」、ちょっと考えて「6回会ったと思う。セックスは3回。つまり平均でセックスは5割だな」

でも心で通じ合うので半分だっていうなら、本物の不倫のほうがずっとよくないですか、と聞いてみた。そのほうが、愛人がよくしてくれるのは少なくともおカネのためじゃないってわかるわけだし。

まだわかってないね、とマーティン。不倫はリスクが大きすぎるし、ちゃんとしてない。おカネを払うから自分の身を守れるんだ。

「いいか、不倫とは違うんだ。キャシーと先を考えた付き合いをしようとは思ってないんだよ。キャシーがよくしてくれるのは、ぼくが結婚していて奥さんと別れようなんて思ってないのがわかってるからだ。彼女といると気が休まる。ぼくのことをウチの奥さんがキャシーと同じぐらいわかってたら、彼女、キャシーにありがとうって手紙出すだろうよ!」

「それじゃ、売春婦と会うのは結婚生活のためってことですか?」。ぼくの声に皮肉がありありと表れた。

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