満員電車での通勤は、かつて「命懸け」だった

会社苦いかしょっぱいか

「昔はよかった」わけではない(撮影:今井康一)

父は国際スパイ、母はナポリの花売り娘。自称イタリア生まれの謎の論客「パオロ・マッツァリーノ」という設定で著者がデビューしたのは2004年の『反社会学講座』。以降、統計や過去の新聞記事から人びとが「常識」と信じ込んでいる慣習や振る舞いを徹底的に嗤ってきた。食傷気味の読者もいるかもしれないが、多くの人が無縁ではない「企業社会」が本書『会社苦いかしょっぱいか』の題材と知れば、読まずにはいられないだろう。

マイホームや宴会、出張から、こころの病、社長と秘書と愛人まで。サラリーマン生活を送っていれば避けては通れないテーマに突っ込みまくる。

数十年前の週休2日制の議論

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例えば、休日について。最近では有休の取得奨励はもちろん、企業によっては介護・看護を行う社員を対象に週休3日制の導入を準備する動きすらある。つい数十年前までは週休2日制を導入するのに侃々諤々の議論をしていたのとは隔世の感がある。

では、週休2日制を導入するときにどのような議論があったか。本書ではふり返っているのだが驚かざるをえない。1970年代に週休2日制の議論が世の中を賑わしていたとき、否定的な見方が多かったというが、その理由が、「6日でやっていた仕事を5日でやるには効率を上げなくてはいけない」、「生活のペースが狂って心身に不調を来す」などなど。冗談ではなく真剣な主張なのだから、黙り込んでしまう。

当時のミサワホームの社長に至っては「週休2日制くそくらえ論」なるタイトルからして過激な論考を雑誌に寄せ、「2日も休んで家にゴロゴロしてると会社への不満がたまるのでよくないと主張」したとか。いや、行った方が不満がたまるって。

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