錦糸町と浅草、今宵も東京の右側に足が向く 食の感度が高い人がひそかに注目している

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自分にとって、その契機となった一軒はやはり、2013年に亀戸にオープンするやいなや、人気に火がついたイタリアン「メゼババ」だろうか(ちなみにこちら、前述の「食べログ」へのレビュー投稿はご遠慮ください、という趣旨の貼り紙が店内にあり、その結果レビュー0件&点数なしをキープしている。信頼関係がなし得た奇跡か)。「亀戸ってどこ? 遠いんでしょ〜」と言っていた(もちろん自分もそうだった)はずの面々が、力強さみなぎるイタリア料理食べたさに、総武線に揺られて亀戸参り。

黄色い電車に乗り慣れてきたのでお隣の錦糸町に足を延ばしてみれば、こちら新旧入り乱れての”各国料理のデパート”状態。かつて錦糸町は”飲む・打つ・買う”の三拍子が揃う街として知られ、夜が深まれば少々スリリングな一面もあるとは聞くが、そちらは殿方に任せて食欲のみにフォーカスする。

タイ料理の老舗「ゲウチャイ」や食材店を併設する「タイランド」もあれば、夜8時から朝4時までという営業時間で日替わりのカレー定食のみを供するバングラデシュ料理店「アジアカレーハウス」や南インド料理の巨匠と謳われるシェフが腕を振るう「ヴェヌス サウス インディアン ダイニング」、現地で評判の高い台湾の”駅弁”を模した「台湾鉄道弁当」が食べられる(テイクアウトも可能)「劉の店」、中国回教徒向けの羊を中心とした中華料理を提供する「東京穆斯林(ムスリム)飯店」……と、アジア諸国の料理はなんでもござれ。年季が入ってなんともいい佇まいの大衆酒場、酒も肴も”発酵”をテーマに揃える酒亭なども点在し、渋谷からなら半蔵門線に乗ってわずか36分でたどり着けるワンダーランドだ。

ちなみに”サ道”を嗜む紳士なら、錦糸町駅南口目の前にある老舗サウナ「楽天地スパ」でロウリュ(サウナの中で熱せられた石に水をかけ、立ち上る蒸気を浴びるフィンランド式の入り方)でさっぱりしてから一杯、もよろしいかと。男性専用のため未経験だが。

浅草の最新の動向

下町の食都、浅草の最新の動向にも触れておきたい。古くから和洋中の旨いものが揃っていることは周知の事実だが(特に、和のイメージが強いようでいて実は古くから営む洋食店が多いことは非常に興味深い)、昨年から新たな波が起きているのが「観音裏」と呼ばれる一帯だ。雷門側から見ると、浅草寺や観音堂の裏手、言問通りを渡った側は、大きなランドマークはないのだが、もともと優れた飲食店が点在している。

そこに、どういうわけかこの半年強で個性あるカウンターフレンチが3軒オープン。2軒までは偶然だが、3軒揃えば”現象”と言って差し支えないだろう。和洋を巧みに取り入れた空間で自然派ワインと料理を楽しめる「しみいる」、若いシェフによるスタイリッシュなコースが新鮮な「ルディック」、そして浅草橋で人気のワインダイニングで腕を振るったシェフの独立店「ペタンク」は”マイクロビストロ”と銘打ち、プリミティブなおいしさのある料理と、こちらもナチュラルワインがあれこれと。”洒落た旨いもの屋”と形容したい空気感が漲る。

甲本ヒロトは「写真には写らない 美しさがあるから」と歌ったが、「食べログには(なかなか)反映されないおいしさがあるから」。そんなこんなで、今宵も東京の右半分に足が向く。

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