次期FRB議長、サマーズなら利上げ早まる? サマーズ氏とイエレン氏。二大候補の違い
[ワシントン 19日 ロイター] - 新たな金融危機や景気後退入りがなければ、次の米連邦準備理事会(FRB)議長は金融政策の段階的な正常化を見守ることになりそうだ。
だが、もし2人の議長候補者の発言を指針にするなら、最初の利上げを含めてそのペースは、ローレンス・サマーズ元財務長官が議長に就任した場合の方が、ジャネット・イエレン副議長の場合と比べて幾分早まるだろう。
さらにサマーズ氏がFRBを率いた場合には、来年1月に任期切れを迎えるバーナンキ議長が採用した非伝統的な金融政策を延長したり拡大する可能性は低いと思われる。
サマーズ氏とイエレン氏の違いが最もよく表れているのは、4月に2人がそれぞれ別の場で行った発言だ。
バーナンキ議長の政策に対する強力な支持者であるイエレン氏は、ワシントンでの経済記者向けの講演で、仮に望ましい水準以上にインフレ率が上昇するという代償を払ってでも、FRBは失業率の低下に努力を傾注すべきだと熱心に説いた。
対照的にサマーズ氏は、同じ4月にカリフォルニア州で開かれた非公開の会合で、インフレ率が望まくない水準にならないうちに失業率が相当程度低下するかどうか疑わしいとの見解を示した。
サマーズ氏は、量的緩和策として知られるFRBの大規模な債券買い入れプログラムの有効性にも懐疑的な立場を取っている。
継続性
JPモルガン・チェースのエコノミスト、マイケル・フェローリ氏は「イエレン氏とサマーズ氏はともに時期尚早の引き締め策を取ることはなさそうだが、どちらかといえばそのリスクはイエレン氏の方がサマーズより低い」と語る。
一方、セントルイス地区連銀のブラード総裁は15日、ケンタッキー州ルイビルで「多くの政策は継続性が保たれると思う。新議長が誰になろうと継続性を重んじるだろう。就任してすぐに事を荒立てるようなことは望まないだろうから、円滑な権限の移行を見込んでいる」と述べ、誰が議長になっても急激な政策変更はないとの見方を示した。
しかし、期待通りに景気回復が実現しなかったり、失業率がさらに低下しても事実上のゼロ金利政策をどの程度の期間継続するのかをめぐって論争になった場合、FRB議長の金融政策に対するわずかな考え方の違いが重要な意味を持つかもしれない。
バーナンキ議長の下でFRBは既に、失業率が6.5%まで低下するまで超緩和的な政策金利の水準を継続する方針を明言しており、幹部の1人は借り入れコストを低水準に抑えるために、失業率が5.5%に低下するまで超緩和的な政策を続けるべきだと主張している。
景気指標がまちまちの内容だった場合、サマーズ氏はこうした動きを支持することにあまり前向きにはならないだろう。
一方イエレン氏は、仮にそれがインフレ率の若干の上昇を招くとしても、長期の失業率を低下させる重要性を強く支持しており、こうした積極的な動きに出る可能性はより大きい。
イエレン氏はまた、長期失業が経済の健全性により大きなダメージを与えるとみており、長期の失業率を低下させるため、インフレ率がFRBの2%の物価目標を小幅に上回ることを許容する「最適な政策軌道」と呼ばれる政策を提示している。
結果的にイエレン氏は口頭や文書による多くの公式発言の中で、バーナンキ議長が定めた道筋から大きく逸脱せず、むしろさらにハト派的な政策を取る可能性があると明確に表明しているのだ。